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株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
セルフリノベーションはハードルが高く感じますが、慣れてしまえば思いつくままに部屋の印象を変えられます!
しかし必要な材料や準備、手順、注意しておきたいことなど、初めてのリノベーションは分からないことだらけ。
そこで、今回は初心者向けにセルフリノベーションの基本をご説明します。
住み慣れた家も少しリノベーションすれば、あっという間に様変わり!
ぜひ自分好みの部屋にカスタマイズしてみてください。
自分が住む部屋はリノベーションできる?できない?ポイントはここ!
セルフリノベーションをする前に、まずは自分が住んでいる家がリノベーションできるのかを調べましょう。
分譲住宅は、基本的には自由にリノベーションができることが多いですが、電気・配管などの工事が必要な場合は、資格が必須であるケースもあります。
以下のチェックシートを確認して、まずはリノベーションが可能かどうかを調べましょう。
●賃貸の場合
チェック項目 | 備考 | |
---|---|---|
原状回復義務はある? |
ある場合 |
回復時に費用を負担しなければならない |
ない場合 | 契約書を確認して細かい制約がなければ可能 | |
電気配線の変更 | 資格保持者のみが施工可能 | |
配管の変更(キッチン・洗面所・浴室・トイレなど) |
資格保持者のみが施工可能 | |
壁 | 穴をあける、撤去するなどは回復困難なため基本的に不可 | |
天井 | 上階との共用部なので不可 |
●分譲の場合
チェック項目 | 備考 | |
---|---|---|
原状回復義務はある? |
ある場合 |
不可能ではないが回復時に費用がかかる可能性大 |
ない場合 | 規約を確認して、ない場合は自由にできる | |
電気配線の変更 | 資格保持者のみが施工可能 | |
配管の変更(キッチン・洗面所・浴室・トイレなど) |
資格保持者のみが施工可能 | |
壁 | 構造の安全性を配慮すれば基本的には可能 | |
天井 | 上階との共用部なので不可 |
賃貸物件は原状回復が原則!退去時に元通りになればOK
賃貸物件は退去時、入居した状況と同じ状態に戻す(原状回復)のが原則です。
契約書に記載があるので、原状回復できない場合は元通りにするための費用を支払わなければなりません。
しかし、最近では原状回復可能なリノベーションも主流になってきています。ホームセンターや雑貨店で購入できる道具で簡単に部屋を変えることができます。
また、DIYの流行と共に、DIY可能で原状回復義務のない賃貸も増えています。賃貸でもリノベーションを楽しみたい方は、このようなDIYを許可している物件を探してみてください。
分譲マンションはセルフリノベーションできるが構造によって限度がある
分譲マンションは基本的にセルフリノベーションが許可されています。
しかしエントランスや共用配管など、他の住人と共有する部分に手を加えるのは禁止となります。またマンションの構造に大きく変化をもたらすリノベーションには注意が必要です。耐久性に影響をもたらすセルフリノベーションは基本的に不可能だと考えておきましょう。
管理規約でセルフリノベーションに関する規約があるか
管理規約には壁や床など、リノベーションそのものに関する規約のほか、遮音性や水まわり、電気・ガスの容量に関する規定が細かく設定されています。
規約は物件ごとに異なるため、リノベーション前に管理組合に確認を行います。住んでいる住人が快い生活を維持するための規約なので、厳守する必要があります。
配管・配線など資格が必要な部分はセルフリノベーション不可
電気・水道・ガスなどの危険がともなう箇所のリノベーションは、厳しく定められた国家資格がなければ手を加えられません。
仮に何事もなくセルフリノベーションできても、生活中に欠陥に気付くことも十分あり得ます。
こうした箇所のリノベーションは、業者に依頼して確実に行ってくださいね。
家の場所別!業者とセルフの費用比較とリノベーション方法
リノベーションは意外と範囲が広く、家のあらゆる場所を修繕できます。
では一体どんな手順を踏んで行うのか。そしてどのくらいの費用が掛かるのか、セルフリノベーションと業者のそれぞれのパターン別にご紹介します。
箇所 | 仕上げ素材 |
業者依頼時 目安費用 |
セルフ時 総費用 |
難易度 |
日数目安 |
資格の必要性 | おすすめ度 |
壁・天井 | |||||||
クロス (天井・壁) |
1.5~6万円 | 1.5万円~ | 普通 | 1~2日 | 不要 | ★★★ | |
塗装 | 5~8万円 | 1.2万円~ | 低い | 1~2日 | 不要 | ★★★ | |
珪藻土 | 15~25万円 | 7~9万円 | 普通 | 1~2日 | 不要 | ★★☆ | |
漆喰 | 15~25万円 | 4~7万円 | 普通 | 1~2日 | 不要 | ★☆☆ | |
壁タイル (エコカラット) |
5万円~ | タイル価格で変動 | 高い | 壁2.5㎡程度で1日 | 不要 | ★★☆ | |
床 | フローリング重ね張り | 7~13万円 |
4.5万円~ |
高い | 2日 | 不要 | ★☆☆ |
無垢床のオイル仕上げ |
3万円~ | 1万円~ | 低い |
2日 |
不要 | ★★★ | |
棚板 | 塗装・オイル仕上げ | 2万円~ | 1万円~ | 低い | 2日 | 不要 | ★★★ |
ドア (無垢材) |
塗装・オイル仕上げ | 2万円~ | 1万円~ | 低い | 2日 | 不要 | ★★☆ |
玄関 | 塗装・オイル仕上げ |
10~50万円 (ドア交換の場合) |
~1万円/㎡ | 普通 | 2日 | 不要 | ★☆☆ |
バルコニー・ベランダ | タイル・パネル貼り付け | 1.5~2万円/㎡ | 1万円/㎡ | 低い | 1日 | 不要 | ★★☆ |
※すべて6畳間を想定
※業者依頼時の費用は、使用する素材の種類によって差があります
壁・天井
たった一面だけでも印象をガラッと変えられる場所が、壁と天井です。
工事の種類は幅広く、専門業者が行う本格的なものから、簡単な材料でできる手軽なものまでさまざま。
壁は隣室との仕切りを壊して、広い1部屋とする解体工事もできますが、電気配線が絡むため資格がない場合はできません。また壁が無くなることで、家のバランスが崩れて耐久性に乏しくなる可能性も考慮する必要があります。この辺りは個人では手に負えないので、必然的に業者へ依頼するのが一般的です。
しかし、クロス(壁紙)の張り替えや壁の材質変え、塗装、タイル貼りなどはホームセンターで手に入る道具で、簡単にリノベーションできます。必要日数は乾燥の時間も含めて2日程度です。
床
床は資格なしでもできるリノベーションの一種です。フローリングは張り替えなくても、上から重ね貼りできる資材があれば、簡単にリノベーションできます。
範囲が広く、家具の移動や準備に時間がかかるため、人手が多いほどスムーズに完了します。少し難易度が高めですが、部屋の印象をガラッと変えたい方におすすめです。
棚
部屋の印象は家具やインテリアの置き換えでも、簡単に変えられるのがポイント。何か小さい部分からリノベーションを始めてみたい方は、家の中にある家具に塗装を施してみてはどうでしょうか?
例えば棚の塗装を行う場合、塗装の上からオイルを塗って保護するだけで完成します。準備する道具も塗装剤・ハケ・オイルのみで、手軽に始められます。
ドア
塗装に慣れたらドアのリノベーションをしてみましょう!
ドアは部屋のニュアンスを左右する大切な部分。ドア自体を取り替えなくても、上から塗装すれば全く違うドアに大変身します!
さらにこだわりを持つなら、ドアノブも取り換えてドアを取り換えたかのようにリノベーションしてみてください。ドアノブ交換は基本をおさえれば簡単で、しっかり計測すれば失敗しません。業者に依頼するとドアノブ交換だけで1万円程度の費用が掛かるので、セルフリノベーションで非常に安く抑えられます。
キッチン台
水回りは配管の関係で資格が必要ですが、キッチンの台なら上から貼るタイプのリノベーショングッズや、タイルで印象を変えられます。最近では、100円ショップでもキッチン台付属の引き出しや、開き戸の見た目を変えるグッズが販売されており、数千円で済むことも。
玄関
玄関のリノベーションは、戸建て住宅をお持ちの方におすすめ!マンションの場合、玄関は共有部に含まれるので、塗装やドアの取り換えには制限がかかっている可能性があります。
ドアの取り換えとなると業者にお願いする必要があり、費用も50万円以上かかりますが、塗装のみならセルフで十分可能。壁やドアの塗装と同じ手順でできますが、綺麗に仕上げるために、晴れた日を選んで行うのがおすすめです。
ベランダ・バルコニー
ベランダやバルコニーはタイル貼り替えで一気に印象を変えられます。しかし老朽化が進んでおり、それを新しくしたい場合には業者にお願いする必要があります。雨ざらしになるベランダは、見た目だけでなく機能面も考慮しなければならないからです。
また、タイルを貼る場合も、グレーチングという格子状の蓋を取り付けることで、大雨でも雨が溢れない工夫が必要。見た目だけなら本格的なセルフリノベーションもできますが、機能面を考慮すると業者にお願いするのが良さそうです。
初めてのセルフリノベーションで陥りやすい7つの失敗例
憧れのリノベーションを安価で実現できるのがセルフリノベーションの魅力ですが、残念ながら失敗の可能性も。
7つの失敗例は以下の通りです。
- 準備不足で家具や家を傷つけてしまう
- 工期が長すぎて途中で飽きてしまう
- 費用が業者を利用した場合よりも上回ってしまう
- 見た目重視で機能性が劣ってしまう
- 貼り付ける家具やボードは安全性が後回しになってしまう
- 完成度がイマイチで納得いかなくなってしまう
- 使い勝手が悪くなってしまう
陥りやすい失敗例を抑え、しっかりと対策を立てておきましょう。
準備不足で家具や家を傷つけてしまう
セルフリノベーションは何より準備が大切。準備を丁寧に行えば行うほど、工事自体はスムーズに進み、仕上がりもより綺麗になります。
準備で必要なのは、既にある家具や家を傷つけないように保護すること。そして工事のためのスペースをあらかじめ用意しておくことです。移動する必要のある家具は邪魔にならない場所に移動しておきましょう。
また、必要な道具が揃っていないのも準備不足によるものです。工程の計画を綿密に練れば、道具や日程調整が計画しやすくなりますよ!
工期が長すぎて途中で飽きてしまう
リノベーションの実例を見ていると、ついつい張り切って大掛かりな工事になりがちです。しかし初めてのリノベーションは思うように進まず、結果的に膨大な工期がかかってしまうのです。
期間が伸びればやる気もどんどん失われていきます。特に完成図が見えない状態では、モチベーションが保ちにくいのがネック。
生活に関わる場所は工期が伸びると、日常生活が送れなくなる可能性もあります。自分の技量に合ったリノベーション計画を立てましょう。
費用が業者を利用した場合よりも上回ってしまう
セルフリノベーションを初めて行う場合、工事に必要な基本の工具を一から揃えなければなりません。この工具は渋らずに、必要なものをしっかり用意するのがポイント。工具は工事の完成度を上げる大事な要素です。
また、大掛かりなリノベーションの場合、普段は使用しない特殊な工具が必要になります。結果的に工具・材料費・準備のために必要な道具類など、結果的に業者の見積もりを上回る可能性もあるのです。
見た目重視で機能性が劣ってしまう
セルフリノベーションの実例は、デザイン性に優れた素敵なモノばかりですよね。しかし生活する家として相応しい機能性はしっかり備わっているでしょうか?
特に重視したいのが、遮音性と断熱性です。
機能面にこだわったり、機能改善のリノベーションを行う場合は、業者に依頼する方が満足度も高く仕上がります。
貼り付ける家具やボードは安全性が後回しになってしまう
最近はシンプルイズベストで、貼り付け家具やボードが流行中。しかしこれらをセルフリノベーションで取り入れるのは、少し危険です。
耐久性はもちろんですが、数十万円で販売されているような家具を真似しても、全く同じものができるとは限りません。また専門家が家具を作る時は、壁面の耐久度も一緒に考慮されています。セルフリノベーションのせいで壁が壊れてしまった!なんてことにならないようにしましょう。
完成度がイマイチで納得いかなくなってしまう
一番多いのが完成度に関する失敗です。
セルフリノベーションの完成物と、自分で思い描いた設計図や、参考にした写真を見比べると「なにかが違う」と、僅差で違和感を感じるかもしれません。
使い勝手が悪くなってしまう
一番深刻な失敗が、実際に生活してみると非常に使い勝手が悪い場合です。いくらデザイン性が高い設計だとしても、日常生活に支障をきたせばストレスのもとになります。
完成後のイメージが掴みにくい初心者が陥りがちな失敗なので、回数を重ねるごとに減っていくでしょう。
セルフリノベーションの費用を安く抑える!セルフリノベ節約のコツ
セルフリノベーションで最も重視したいのが、コストパフォーマンスです。
業者にお願いするリノベーションより安く済ませられるのがセルフリノベーションの魅力なので、コストにはとことんこだわりましょう。
簡単にリノベーションできるグッズを活用する
最近ではセルフリノベーション用の簡易的なグッズが、数多く販売されています。
簡易的と言っても、侮れないレベルまで進歩してるのが特徴。ホームセンターのセルフリノベーションコーナーだけでなく、雑貨店、100円ショップなど、あらゆるお店をまわってみてください。
資材の質を検討してみる
セルフリノベーションでコストカットしやすいのが、使用する資材です。資材の質が良ければ必然的に値段も高くなります。しかし本当にそのレベルの品質が必要でしょうか?
完成図にこだわるのも大切ですが、固執しすぎず、柔軟に対応を考えるとセルフリノベーションも上手くいきます。なにか代替できそうなモノはないか、頭の中でイメージを膨らませる癖がつくとよいですね。
DIYが得意な助っ人に頼る
先ほどセルフリノベーションには道具のコストもかかると説明しましたが、DIYやセルフリノベーションが得意な方は、特殊な専門道具を持っている場合もあります。
もし特殊な部分をセルフでリノベーションしたいと考えた際、知人にリノベーションを趣味とする人物がいないか検討してみてください。道具を借りられるだけでなく、詳しいやり方のレクチャーも受けられるかもしれません。
まとめ
リノベーションと聞くと業者を利用した本格的なものを想像しますが、箇所や規模、内容次第ではセルフで行えるのです。簡単な部分はセルフリノベーションに切り替えると、費用削減になります。
どんなにセルフリノベーションが上手い人でも最初は初心者です。
まずは基礎をしっかり学び、できる範囲のセルフリノベーションから始めてみてください!