マンションに防音室を作りたいけど分からない、失敗したくないという想いをお持ちではないでしょうか?私たち株式会社ユニテが30年間様々な経験から、マンションに防音室を作る時の費用や施工期間などをまとめてみました。
目次
株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
地方で防音室付きマンションを探しているものの、選択肢が少なく困り果てているという方もいるのではないでしょうか?
全てのマンションに防音室が必ず備わっているわけではありません。
そのため、防音室対応の特殊なマンションを選ぶ必要があると言えます。
一方で、防音室は一般的なマンションをリフォームすることで後付けも可能です。
しかし、防音室付きのマンションを見つけたり、一般的なマンションを防音対応にしたとしても、以下のような問題に出くわすこともあるかもしれません。
- 想像以上の音漏れ
- 演奏時間や楽器の種類に制限がある
- 他の住民からの苦情がある場合も
- 他の住民の音で自分が苦痛になる可能性
- 大型楽器の搬入が出来ない可能性
- 湿気が溜まりやすい
- 家賃が高い
- 防音設備の重さによっては2階以上に住めない場合がある
防音対応を施したマンションに生じる問題点を早めに知っておくことで、想定外の失敗を回避できます。
そこで今回は、地方にいながら防音対応のマンションを探している方向けに、最初に知っておくべき落とし穴や、一般のマンションに防音室を後付けする方法についてご紹介します。
この記事を読めば、以下のことが明確になります。
・防音室付きマンションの落とし穴
・マンションに防音設備を後付けする3つの方法
数少ない防音室付きマンションを探すときに見落としてしまいがちなポイントと、一般のマンションに後付けする方法を把握し、自身の現状に合うマンション探しの参考にしてみてください。
【相場費用と施工期間】マンションの防音室の選択肢
マンションの防音設備は、一般的に以下の方法で後付けできます。
【マンションの防音室の選択肢】
メリット | デメリット | おすすめ度 | 費用相場 | 工事・設置期間 | |
丸ごとリフォーム工事をする |
・防音室マンションを選択しなくて良い |
・リフォーム費用が別途掛かる ・一定期間の間、仮住まいを探す必要がある ・防音設備の事例がある業者を探さなければならない |
◎ | 200~600万 | 1~3週間 |
組み立て式防音室を設置 | ・防音室マンションを選択しなくて良い ・自分で設置できる ・リフォームができない場合に活用できる |
・部屋が狭くなる(重さ次第では2階以上のマンションで設置不可) ・音を完全に防げないものもある |
〇 | 50~300万円 | 半日 |
壁や床に防音機能を持つ素材を入れる | ・工期がリフォームより短期 ・価格も安い ・結露防止も期待 |
・構造によっては取り付けできない場合がある ・リフォームや組み立て式防音室よりも防音効果が薄い |
△ | 17~30万 | 1~3日 |
マンションに防音室を後付けする際は、マンションの大家さんや管理会社に相談する必要があります。
賃貸の場合は特に「原状回復義務」を考慮しながらの後付けになるため、できる施工内容が限られてくるでしょう。
相談した上で後付け可能なのであれば、無理に防音室付きマンションにこだわる必要はありません。
しかし、今住んでいるマンションに防音設備を搭載できない場合は、防音室付きマンションに引っ越すことも選択肢の1つになるでしょう。
丸ごとリフォームする場合の費用と施工期間の目安
一般のマンションを丸ごとリフォーム工事して、防音室を作ってしまうという方法です。
部屋そのものがしっかり防音されるよう、上下左右すべて施工するので、内部で大きな音を出しても外に漏れにくくなります。
たとえば、振動や音が大きいドラムなどの打楽器や、ベースギターのような低音の響きやすい楽器を使ったとしても、効果的に音や振動を遮断できるのがメリットです。
一般のマンション1室(6畳目安)を防音対応にした場合、マンションの面積や工事個所によっても変動しますが、おおよそ200万円〜600万円の費用がかかります。
また、工事には1~3週間ほどの期間が必要です。
以下は、6畳を目安にした目的別の費用相場になります。
【マンション1室を丸ごとリフォームする場合の費用相場】
防音目的 | 費用相場 |
一般的な防音性 (ピアノの音やステレオの音) |
200~300万円 |
大きな音や重低音 (ドラムやギターなど) |
400~600万円 |
また元々マンションの構造上、防音性が低かった場合は強固な防音工事をしなければならないため、壁を厚くしたり性能の良い防音素材を採用したりする必要があります。
防音性の高い鉄骨鉄筋コンクリートなどのマンションと比較すると、費用相場は50万円ほどかさむ傾向です。
リフォーム会社の中には、防音設備の後付けに詳しい業者も存在します。
リフォーム会社のホームページなどで実績をチェックして、信頼できる業者を選定するよう心掛けましょう。
組み立て式防音室を設置する場合の費用と施工期間の目安
大がかりな工事が難しい場合は、防音機能のある「組み立て式防音室を設置する」ことも検討してみましょう。
組み立て式の防音室は、およそ半日程度で設置できるものが一般的です。
組み立て式防音室の性能は、使用素材や大きさによって異なり、費用もそれに比例します。
メーカーの製品相場は50万円〜300万円ほどとピンキリなので、複数社の製品を比較・検討するのがおすすめです。
ただし、組み立て式の防音室は、部屋の中に大きな箱を設置するようなものなので、部屋が狭くなってしまうことを考慮しなければなりません。
また、マンションによっては、構造上組み立て式防音室の導入時に大家さんや管理会社からの許可が必要なケースもあります。
導入を検討する際は、一度マンションを管理している方に相談しておくと安心です。
壁や床に防音機能を付与する場合の費用と施工期間の目安
大規模な工事が出来なかったり組み立て式防音室の設置が困難だったりする場合は、リノベーションの一環として既存の壁や床に吸音材や遮音シートを入れる方法を検討するといいでしょう。
簡易的な施工内容であることから、17万円~30万円前後の費用相場・1~3日程度の施工期間で着手できます。主な施工内容は以下の通りです。
- 壁内部の石膏ボードを2重にする
- ダクトに吸音材を設置する
- 換気口経由で音漏れしないよう部品を交換する
施工する範囲や内容によっても変動しますが、一般的に壁のリフォームだと15~25万円、換気口なら2~5万円程度で施工できます。
ただし、前述の2つの方法と比較すると、簡易的な防音機能を施すという点において防音性は落ちるため注意が必要です。
主に以下の目的で防音対策したい人におすすめします。
・子どもがいる方
・外からの騒音をなくしたいと考えている方 など
防音室付きマンションを探す
マンションの規約や大家さんの反対などでリフォームが難しい場合は、防音室付きマンションへの引っ越しを検討するのも1つの手段でしょう。
近年の賃貸物件では、全室が防音対応されている「防音室マンションシリーズ」も登場しはじめています。
楽器演奏者だけでなく、道路の騒音や子どもが出す音・ペットの鳴き声などが発生しても、周囲を気にせず過ごせるようなマンションを探してみてもいいかもしれません。
「防音室マンションシリーズ」とは、プロの楽器演奏でも静かに過ごせる最高品質の防音コンセプトを持つマンションのことで、現状以下の5ブランドが存在します。
ただし、「防音室マンションシリーズ」は関東・関西圏といった都心部に集中しているため、地方に住んでいる人には難しい選択肢かもしれません。
【賃貸】防音室付きマンションを借りる際に気を付けること
地方に住みながらでも、根気強く探せば防音室付きマンションに出会える可能性はあるでしょう。
防音室付きマンションのメリットには、以下のようなものがあります。
- 大音量で映画や音楽を楽しめる
- 友人と一緒に音楽を演奏できる
- 住人同士のコミュニティが広がる可能性がある
- バンド活動に活かせる
- ピアノ教室・ボイストレーニング教室を開ける
しかし、せっかく見つけた防音対応のマンションだとしても、思わぬところに落とし穴があるものです。
防音室付きマンションを借りる前に考慮したい、代表的な落とし穴を7つご紹介します。
それぞれについて詳しく見てみましょう。
1.音漏れがまったくないわけではない
「防音対応のマンションなのに音が漏れるの?」と驚く方もいるかもしれません。
防音対応とはいえ、そのマンションがどのような設備を利用しているかによって、完全に遮断できていない場合があるのです。
低コストで造られた防音設備の場合、完全に音漏れを防ぐことは困難だと言われています。
特に楽器演奏を日ごろから行う場合、質の悪い防音設備を導入したマンションでのびのび演奏してしまうことがかえって騒音になることもあるのです。
2.演奏時間や楽器の種類に制限がある
防音対応のマンションであっても、演奏時間や楽器の種類を制限しているケースも存在します。
「防音対応なら自分の好きな時に演奏できる」と思ってしまいがちですが、契約書面にそれとなく制限を記載している物件もあるようです。
マンション契約前に確認を怠ってしまうと、思わぬ制限に翻弄されてしまい、想像していた生活ができないと言ったトラブルが発生してしまう可能性があります。
3.他の住民とトラブルになる可能性がある
防音設備の精度次第では、たとえ「防音マンション」と名がついていたとしても同じマンション内の住民や近隣から苦情が出ることも考えられます。
防音室付きマンションは、楽器演奏者に限らず以下のような方にも需要があるためです。
・物音や騒音に敏感な方
・子どもがいる方
・大音量で映画鑑賞や音楽鑑賞を楽しみたい方 など
自分にとっては心地よい演奏が、音に敏感な方にとっては苦痛でしかないということも考えられます。
防音室付きマンションにコンセプトが明記されていない場合は、楽器の演奏をしない方も住んでいる可能性を考慮しなければなりません。
そのため、事前にどのような方が住んでいるかをチェックすることも大切です。
4.他の住人の音を自分が苦痛に感じる可能性もある
防音マンションに住むということは、他にも楽器演奏などで騒音を出す可能性がある住人がいるということになります。
つまり、全員が静かに暮らしているとは限らないということです。
他の住人の音が自分にとって苦痛になってしまう場合もあることは、しっかり念頭においておくといいでしょう。
楽器だけでなく以下のような音で自分が苦痛を感じる可能性もあるかもしれません。
・犬の吠える音
・猫が床に着地する音
・大音量の音楽や映画の音 など
5.大型楽器の搬入が出来ない可能性がある
グランドピアノやドラムなどの大型楽器を日ごろから演奏する方にとっては、楽器を搬入できるかどうかが最大のチェックポイントになるでしょう。
せっかく条件の良い防音室付きマンションが見つかったとしても、大型楽器がエントランスに入れられず、運べない場合もあるのです。
防音マンションの特徴として、音を極力漏らさないために窓を小さくしているケースも考えられるため、入り口だけでなく窓からの搬入も難しい場合がありますので、注意が必要です。
「こんなはずじゃなかった!」とならないためにも、大型楽器を所持している方は搬入できるかどうかを事前に確認したうえで契約することをおすすめします。
6.湿気が溜まりやすい
防音室付きマンションは音を外に漏らさない建築構造であるため、窓も密閉度が高く換気しにくい可能性があります。
部屋に楽器を配置する場合は、湿度50%前後を保ち続けることが重要です。
そのため、空調や日々の換気などをきちんとおこなわないと、楽器も傷んでしまうでしょう。
7.家賃が高い
防音室付きマンションは、一般的なマンションと比較すると数が少ないため希少価値があり、どうしても家賃や初期費用などが高くなる傾向があります。
防音室という特殊な設備を導入しているぶん、建築時のコストも高く、それを考慮した家賃や初期費用の価格が設定されているのです。
【性能】マンションの防音室は目的別に考える!
防音設備の良し悪しを人前に把握するには、「日本建築学会」や「JIS規格」が定める「遮音等級」を確認するといいでしょう。
遮音等級とは、建物の遮音性を表す指標のことです。
遮音等級 | D-65 | D-60 | D-55 | D-50 | D-45 | D-40 | D-35 | D-30 |
ピアノ・ステレオ等の大きい音 | 通常では聞こえない | ほとんど聞こえない | かすかに聞こえる | 小さく聞こえる | かなり聞こえる | 曲がはっきりわかる | 良く聞こえる | 大変良く聞こえる |
テレビ・ラジオ、会話等の一般の発生音 | 聞こえない | 聞こえない | 通常では聞こえない | ほとんど聞こえない | かすかに聞こえる | 小さく聞こえる | かなり聞こえる | 話の内容がわかる |
生活実感、プライベートの確保 |
ピアノやステレオを楽しめる。 ※機器類の防振は不可欠 |
カラオケパーティーなどを行っても問題ない。 ※機器類の防振が必要 |
隣戸の気配を感じない | 日常生活で気兼ねなく生活できる | 隣の住宅の有無が分かるがあまりきにならない | 隣戸の生活がある程度わかる | 隣戸の生活がかなりわかる | 生活行動が分かる |
この表には入っていませんが、「防音室」として利用するためには最低でもこの等級の中でも「D-70以上」を目指すべきというのが業界の基準です。
さらにドラムやトランペットなどは「D-80以上」があれば確実に音漏れの心配はなくなります。
マンションに防音室を作る際には、この遮音等級を一つの基準として把握しておきましょう。
ここからは、以下の3つのケースに着目して、防音室に必要な性能の具体例について解説していきます。
- ピアノを演奏したい
- ドラムを演奏したい
- オーディオやシアターを大音量で楽しみたい
ケース①:マンションでピアノを演奏したい
ピアノやフルートなどの楽器を室内で演奏したい場合は「D-55」以上の遮音性能が必要です。
具体的には以下のようなリフォームをすることをおすすめします。
- 既存の壁の内側に固定式の遮音壁を設置する
- 窓に防音サッシを付けて床を二重浮き構造にする
- 壁・床・天井に厚みを持たせる
- ユニットタイプの防音室を設置する
また、グランドピアノを置きたい場合には、最低でも3畳以上のスペース確保が必要になります。
ユニットタイプの防音室を設置する際は参考にしてください。
ケース②:マンションでドラムを演奏したい
ドラムを室内で演奏したい場合は、ピアノよりも大きな音や振動が発生します。
そのため、より高い「D-65」以上の遮音等級が必要です。
D-65以上の遮音等級にするには、以下のようなリフォームをおこなうことをおすすめします。
- 天井や壁に厚みをもたせて防音性をあげる
- 強固な防音室の重量に耐えうるよう床を工事する
- 内装材に吸音効果があるものを使う
音が外部に漏れないよう、部屋の壁・天井・窓・床などのすべての設備に防音対策をする必要があります。
ケース③:マンションでオーディオやシアターを大音量で楽しみたい
映画館のように「音楽や映像を大音量で楽しみたい」という場合にも、防音設備は必要です。
シアタールームにする部屋の間取りや隣接する部屋の用途によって、必要になる遮音性能は異なりますが、「D-60~70」程度の遮音性能があれば安心できるでしょう。
リフォーム時には以下の工事を検討することをおすすめします。
- ドアやサッシを2重にして、建具間に空気層を設ける
- 天井・床・壁にも吸音性の高い内装材を使う
マンションに防音室を作る時の注意点
最後に、マンションに防音室をリフォームする際に気を付けることを3つ紹介していきます。
- 正しい防音対策を取る
- 【賃貸・分譲】マンションの管理規約に注意する
- 耐荷重に注意する
上記の注意点は、トラブルを引き起こさないために必ずチェックしておくべきポイントです。
スムーズに防音室を作るためにも、しっかり把握しておいてください。
正しい防音対策を取る
マンションの防音室を作る際は「目的をはっきりさせて正しい対策を取る」ことが大切です。「ピアノを演奏したい」「ボイストレーニングしたい」など、まずは防音室を作る目的を明確にする必要があります。
また、目的の騒音レベルに見合った防音設備を作ることもポイントです。床だけ・壁だけなど、部分的な工事では十分な防音効果を期待するのは難しいでしょう。
施工していない箇所から音が漏れてしまう可能性が高いためです。
高い遮音性が必要な場合は、部屋を全面的にリフォームしなければなりません。
【賃貸・分譲】マンションの管理規約に注意する
賃貸マンションに防音室を作りたい場合は、まず借り主の同意や許可を得る必要があります。ただし「原状回復義務」を全うできないレベルのリフォームをすることは原則できないため、注意が必要です。
退去時にはそのコストがかかることに留意しておいてください。
また、分譲マンションの場合であっても好き勝手に工事できるわけではありません。
マンションでリフォームなどをおこなう場合は、マンションの「管理規約」に基づいた工事が求められます。さらに、事前にマンションの管理組合への届け出も必要です。
耐荷重に注意する
防音室に使われる建材は、非常に重い物が多い傾向があります。音を伝えないためには、空気の振動を遮断するため厚みが必要になるのです。
そのため、遮音性能を高めれば高めるほど、床や壁の建材が重くなってしまうでしょう。
一般的な住宅の床の耐荷重はおおよそ180㎏/㎡だといわれています。
それ以上の重さの負荷がかかると床が抜けてしまう事態になりかねないため、十分注意してください。
富山県でマンションの防音室設置を検討している際はユニテにご相談ください
特に一般のマンションに防音設備を導入する際は、マンションの構造チェックや導入の可否など、プロの判断を仰ぎながら検討したほうが安心です。
富山県でマンションに防音室や付随する設備の導入を検討していると言う場合は、ぜひ一級建築士が在籍する「ユニテ」にお気軽にご相談ください。
問い合わせはこちらから。
まとめ
地方在住者が防音室マンションを探す際に知っておきたいことをご紹介しました。
- 地方在住者の防音室付きマンションの一般的な探し方
- 防音室付きマンションの落とし穴
- マンションに防音室を後付けする3つの方法
特に地方在住者の場合、関東・関西圏といった都心部と比較すると防音室マンションを探すことが難しいと言えます。
そのような状況で希少な防音室対応マンションが見つかったとしても、防音レベルが適切でなかったり他人の騒音に悩まされたりなどで、「思っていたものではなかった」という状況に陥るケースも少なくありません。
管理会社や大家さんへの許可やリフォーム会社への確認など、事前の作業は必要になりますが、一般的なマンションに後から防音設備を導入することも可能です。
この記事を参考に、リノベーション工事による一般的なマンションへの防音設備の導入も視野に入れながら、自身の状況にピッタリの防音室付きマンションを見つけてみてください!