
マンションの間取りを変えたいときに重要なのが「排水管」です。排水管を移動できるかどうかは、床下に排水勾配(こうばい)を確保できるかどうかでほぼ決まります。本記事では、マンションの排水管を移動できるか判断するポイントや費用を解説します。
目次

株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
「壁付けのキッチンを対面式にしたい」「窓のある明るい場所へ浴室を移したい」と相談して、「排水管が動かせないので難しい」と言われた方もいるのではないでしょうか。
間取りを変えたいときに重要なのが「排水管」です。マンションの排水管を移動できるかどうかは、床下に「排水勾配(こうばい)」を確保できるかどうかでほぼ決まります。
この記事では、マンションの排水管について以下のポイントを解説します。
- マンションの排水管は移動できる家・できない家の違い
- マンションの排水管を移動できるか判断するポイント
- マンションの排水管を「動かせない」と言われたときの解決策
- マンションの排水管の移動リフォームにかかる費用
マンションの排水管は移動できる?結論と「動かせる家・動かせない家」の違い
マンションの排水管は、どこへでも自由に動かせるわけではありません。条件が整えば、大きく位置を変えられるケースもあります。
マンションの排水管移動の可否を左右するポイントと、設備ごとごとの難易度の違いを見ていきましょう。
マンションの排水管の移動は「床下の構造」でほぼ決まる
排水管を動かせるかどうかは、床のコンクリート(床スラブ)とフローリングの間に、配管を通せる空間があるかどうかで大きく分かれます。
理由は排水の流れ方にあります。給水管や給湯管は水圧で押し出されるため、配管の取り回しに大きな制約はありません。
これに対し排水管は、自然に流れ落ちる仕組みです。移動する距離に応じて下り傾斜が必要になり、その傾きを収める高さが床下に求められます。
【設備別】キッチン・洗面・浴室・トイレの移動しやすさ
同じ水回りでも、移動のしやすさには差があります。排水の量や配管の太さ、付随する設備がそれぞれ違うからです。
難易度が低い順に並べると、洗面台・キッチン・浴室・トイレとなります。
洗面台
- 排水管が細く、流す水の量も少なめ
- 比較的動かしやすい設備
キッチン
- 排水管に加えてレンジフードの排気経路が重要(外壁の排気口を新しく開けることはできない)
浴室
- 床のスラブだけを一段低くくぼませ、そこにユニットバスを納めている物件は難しい
トイレ
- トイレの汚水はほかの設備の排水管につなげられない
- 配管の通し方にかかわらず位置の変更はほとんどできない
- 汚物を流すため配管が太く(75〜100ミリ)、詰まりのリスクが高い
マンションの間取りについて知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
後悔しないマンションリノベーション!おしゃれな間取りを手に入れよう
マンションの排水管を移動できるか判断する3つのチェックポイント
排水管を移動できるかどうかは、おもに次の3点で決まります。
- 床下の構造
- 排水勾配とパイプスペースからの距離
- 管理規約
図面・築年数・室内の様子などを観察し、ご自宅が間取りの変更をしやすいかチェックしてみましょう。
床下の構造|二重床(スラブ上配管)か直床(スラブ下配管)か
配管の通し方には、大きく2つのタイプがあります。
ご自宅が二重床(スラブ上配管)か直床(スラブ下配管)か確認してみましょう。
- かかとで叩くと空洞のような音が響く、バルコニーとの段差が大きい→二重床の可能性
- サッシの下枠がフローリングより10センチ以上高い→直床の可能性
- 水回りの床だけ10〜15センチ高い→直床の可能性
- 歩くとふかふかする、カーペット敷きの居室がある→直床の可能性(音を抑えるため、やわらかい床材が使われるため)
これらはあくまで目安であり、見た目だけで確定はできません。正確に知りたい場合は、不動産会社やリノベーション会社に問い合わせましょう。
排水勾配|パイプスペースから離れるほど勾配の確保が難しい
排水管を長く延ばすほど、下げなければならない幅も大きくなり、床下の高さが足りなくなります。
パイプスペースは、各住戸の排水をまとめて下の階へ流す縦の管が収まった空間です。水が最後に流れ込む場所であり、位置は変えられません。水回りをどこへ移したとしても、排水はパイプスペースまで届ける必要があります。
横に流す排水管には、管の太さに応じた最低限の傾きが必要です。細い管ほど、急な傾きが求められます。
距離が延びるほど床下の配管スペースを高くしなければならず、その分だけ床が上がって天井が低くなります。「動かせるかどうか」だけでなく「動かしたあとの暮らしやすさ」まで見ておきましょう。
管理規約|共用部の縦管は動かせない・専有部でも事前申請が必要
構造の面で可能だとしても、管理規約で認められなければ工事はできません。マンションは専有部分と共用部分に分かれており、共用部分を個人の判断で変えられないためです。
国土交通省の「マンション標準管理規約(単棟型)」の別表第2では、パイプスペースや床スラブなどが共用部分として挙げられています。給水管は本管から各住戸のメーターまで、排水管は縦管と専有部分をつなぐ排水継手までが共用部分です。継手から先の枝管(横引き管)が専有部分にあたります。
管理規約によっては、水回りの移動そのものを禁じている規約や、理事会の承認を求める規約があるので、早めに目を通しておきましょう。
マンションの排水管を「動かせない」と言われたときの3つの解決策
床下の高さが足りない場合でも、以下の方法なら排水管を移動させられます。
- 床を一段上げて排水勾配を確保する
- ふかし壁の中に配管を通す
- 排水圧送ポンプを使う
それぞれの注意点も合わせて解説します。
解決策①床を一段上げて排水勾配を確保する
もっともよく使われるのが、配管を通す部分だけ床を高くして、必要な傾きをつくり出す方法です。床下の空間が足りないのであれば、床の高さそのものを上げて解決するという考え方です。
たとえば水回りの一角を10〜15センチ上げ、小上がりとして活かす方法なら、メリハリのある空間になり、リビングとの区切りとしても働きます。
注意点をふまえて、しっかりリノベーション会社と話し合いましょう。
解決策②ふかし壁の中に配管を通す
床下で解決できないときに検討したいのが、既存の壁の手前へ新しく壁下地を組み、その内側に配管を通す方法です。床下に納まらない配管でも、壁の厚み分の空間があれば通せます。
よく使われるのは、洗面台や洗濯機の排水を壁の中に通すケース、キッチン背面の壁を厚くして給排水管や給湯管を隠すケースです。増えた厚みを小さな収納やカウンターとして活かせば、見た目も気になりません。
注意点は、壁の厚みの分だけ室内が狭くなることです。数センチ単位で間取りを検討する必要があります。
解決策③排水圧送ポンプを使う
傾きに頼らず、ポンプの力で排水を押し出す装置もあります。これを使えば、自然に流すのが難しい位置にも水回りを置けます。
仕組みは、排水を細かく砕いたうえで、20〜25ミリという細い管を通して既存の排水管まで押し送るというものです。
マンションの排水管の移動リフォームにかかる費用
費用は「設備を入れ替えるかどうか」で大きく変わります。ユニテが手がけたマンション一室の間取り変更では、排水管の移動が約65万円かかりました。
ユニテの実例もふまえながら、費用の目安を紹介します。
マンションの水回りリフォーム費用の目安
マンションの水回りリフォーム全体の費用感を押さえておきましょう。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
金額は物件の構造・工事範囲・設備のグレードによって変わります。
実例①費用495万円|LDK中心のマンションフルリノベーション
before after
和室二間を繋げて、広々としたLDKにリノベーションした事例です。閉鎖的で壁付だったキッチンを、対面式キッチンに変更しLDK全体につながりが生まれました。
LDK中心のリノベーションですが、よく使う箇所を優先的にリノベーションしたことで、浴室も設備を入れ替えて500万円以内に収まっています。
実例②費用680万円|間取り変更なしのマンションフルリノベ
こちらはほとんど間取り変更をほとんど行っていません。排水管の制約で間取りを変えられない場合でも、アイデア次第で雰囲気を一新できます。
浴室扉を開き戸から折り戸にする、スリガラスのパーテーションを採用する、白や明るい色を基調とするなどの工夫で、部屋が広く感じられます。
ユニテは、排水管の移動が難しいときも、さまざまなアイデアをご提案させていただきます。
排水管の交換費用|負担するのは個人?管理組合?
配管の費用は、専有部分なら区分所有者、共用部分なら管理組合(修繕積立金)の負担が原則です。
標準管理規約で共用部分の範囲が決められており、その区分に応じて誰が払うのかが決まる仕組みになっています。
リフォームで動かす枝管は専有部分にあたるため、自己負担での工事となります。一方、大規模修繕で行う縦管の更新は管理組合の負担です。
費用を抑える3つのコツ|移動距離・設備の流用・まとめて工事
マンションの排水管を移動させるときは、工事の範囲を絞り、まとめて実施すれば総額を抑えられます。
マンションのリフォーム費用が知りたい方は、こちらの記事が参考になります。
マンションリノベーションもユニテへおまかせください
同じ物件でも、相談するリノベーション会社によって「できる」「できない」の答えが変わることがあります。
床の造作・ふかし壁・圧送ポンプといった手段を持っているかどうか、管理組合とのやりとりに慣れているかどうかで、提案の幅が変わるからです。
会社を選ぶときは、以下のポイントを確かめましょう。
- マンションリノベーションの施工事例が公開されているか
- 現地調査をしたうえでプランと見積もりを出しているか
- 管理規約の確認や工事申請の代行に対応しているか
- 「できない」で終わらせず、代わりの案を出してくれるか
ユニテは富山県を中心に多くのリノベーションを手がけてきました。マンションリノベーション実績も豊富です。マンションの構造や管理規約を踏まえたうえで、実現できる間取りをご提案しています。
現地調査や見積もりは無料です。ぜひお気軽にご相談ください。
マンション排水管の移動は現地調査で可否を確かめることから始めよう
マンションの排水管を移動できるかどうかは、次の3点で決まります。
- 床下の構造:二重床でスラブの上を配管が通っていれば自由度は高く、直床やスラブを貫通する配管では移動が難しい
- 排水勾配とパイプスペースからの距離:離れるほど床を高くする必要があり、天井までの高さが縮む
- 管理規約:構造の面で可能でも、規約で認められなければ工事はできない
もし「排水管を動かせない」と言われた場合は、次の3つを検討しましょう。
- 床の一部を高くして、必要な傾きをつくる
- ふかし壁の中に配管を通す
- 排水圧送ポンプで、傾きに頼らず排水を押し出す
「うちのマンションはどうなのか」を確かめたい方は、ユニテの現地調査を兼ねた無料相談をご利用ください。暮らしやすい間取りを一緒に考えてみませんか?




