
中古マンションを買うとき、建物の状態が分からないまま決めるのは不安なものです。そんなときに役立つのがインスペクション。本記事では、中古マンションのインスペクションのメリット・デメリット、費用や依頼の流れ、調べる内容について解説します。
目次

株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
中古マンションを探していると、内装がきれいにリフォームされた物件がありますよね。内装は張り替えたばかりでも、壁の中の配管は40年前のまま、という物件も実際にあります。そこで役立つのが、専門家に建物の状態を調べてもらうインスペクションです。
中古マンションなら6万円程度で依頼でき、国土交通省が行った「既存住宅取引におけるインスペクションに関する実態調査」では、実施した人の78.5%が満足と答えています。
この記事では、中古マンションのインスペクションについて、以下のポイントを解説します。
- インスペクションのメリット・デメリット
- 中古マンションのインスペクションで調べる内容
- 中古マンションのインスペクションの費用と依頼の流れ
中古マンションのインスペクションとは?
インスペクションとは、専門家が目で見たり計測したりして、建物の傷みや不具合の状況を調べる調査です。宅地建物取引業法では「建物状況調査」という名前で定められています。
中古マンションのインスペクションについて見ていきましょう。
建築士などの専門家が第三者の立場で建物を診断する
中古マンションのインスペクションを担当するのは、国の登録を受けた講習を修了した建築士です。「既存住宅状況調査技術者」と呼ばれ、決められた基準に沿って調べていきます。売主とも仲介会社とも立場が違うため、客観的な視点で建物を見てもらえる点が特徴です。
一方、民間の「ホームインスペクション(住宅診断)」という言葉は、法律で決められた調査より広い意味で使われています。調べる項目や範囲は会社ごとに違うので、依頼する前に確認しましょう。
インスペクションで分からないこともあります。この調査は、耐震性や省エネ性がどのくらいあるかを判定するものではありません。また、見つかった傷みが構造上の欠陥によるものかどうか、その原因が何かまでは判断しない決まりになっています。
壁を壊さず目で見て調べる調査のため、すべての不具合がないと約束するものではありません。この点も知っておきましょう。
インスペクションを受ける義務はない
中古マンションを買うとき、インスペクションを受ける義務はありません。売主にも買主にも、実施しなければならないという決まりはないためです。
義務になったのは、不動産会社が説明とあっせんを行うことです。不動産会社は「インスペクションをしますか」と聞いてくれますが、実際に受けるかどうかは自分で選ぶ形になります。
中古マンションのインスペクションのメリット・デメリット
インスペクションの一番のメリットは、購入する前に建物の状態を知ったうえで判断できることです。表面のリフォームでは隠せない床の傾きや、配管から水漏れが起きる可能性を専門家が調べてくれます。
どこにいくらかかるのかが見えるため、購入後の資金計画も立てやすいです。不具合が見つかった場合は、価格交渉や購入見送りの根拠にもなります。
インスペクションのデメリットは3つあります。まず費用です。6万円程度かかり、購入に至らなかった物件の分も戻ってきません。
予約と日程の調整で1〜2週間ほどかかることもあり、時間がかかります。その間にほかの買主に先を越される可能性も考慮しましょう。
インスペクションで調べられるのは、マンションでは専有部分が中心です。共用部分は原則として対象外になります。壁を壊さない調査のため、すべての不具合を見つけられるわけではないことも知っておきましょう。
中古マンションのインスペクションで調べる内容
法律で決められた調査の対象は2つあります。「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」です。
中古マンションのインスペクションで調べる内容について解説します。
構造や雨漏りに関わる部分と室内の状態を調べる
構造耐力上主要な部分とは、基礎・壁・柱・床版・屋根版・はりなど、建物を支えている箇所のことです。鉄筋コンクリート造のマンションでは、壁と床組がこれにあたります。雨水の浸入を防止する部分は、屋根や外壁、そこに取り付けられた戸やサッシなどです。
住戸の中では、次のような箇所を確認します。
- 床や壁の傾き(水平器やレーザーで計測)
- 壁やコンクリートのひび割れ
- 雨漏りの跡やシミ
- サッシや建具の開け閉めの具合
- 給排水管からの水漏れの跡やにおい、水圧
- 換気扇の動き
- バルコニーの床の防水層の傷み
さらにオプションとして、床下や天井裏の点検口から中をのぞく調査、赤外線カメラを使った雨漏りの調査なども選べます。
共用部分は原則として対象外
マンションで調べられるのは、基本的に専有部分、つまり住戸の内側です。エレベーターや外壁全体、屋上といった共用部分は対象から外れます。
共用部分は住んでいる人全員の共有財産のため、買主や売主が単独で「調べてください」と依頼できません。廊下や階段などを調べたい場合は、管理組合や管理会社の承諾が必要になります。
共用部分の状態を知りたいときは、以下の書類を確認しましょう。
- 長期修繕計画書
- 修繕の履歴
- 総会の議事録
- 重要事項調査報告書
これらを仲介会社を通じて取り寄せれば、過去にどんな工事をして、今後どんな予定があるのかが見えてきます。
インスペクションでも見つけられない不具合がある
インスペクションは、目で見て計測する調査が中心です。売買の前の建物を傷つけるわけにはいかないため、壁や床を壊して中を確認することはできません。
そのため、限界もあります。床下点検口がなければ床下は見られませんし、点検口を開けても断熱材がぎっしり詰まっていれば、その奥までは確認できません。傷んでいる箇所がどこまで広がっているのか、なぜそうなったのかを突き止めるところまでは行わないのが一般的です。
壁の中を通る配管の傷み具合や、コンクリートの内部にある鉄筋の状態も、解体して初めて分かることがあります。
中古マンションのインスペクション費用と依頼の流れ
中古マンションのインスペクション費用は、物件の広さや調査する会社によって変わるものの、6万円程度とされています。
中古マンションのインスペクション費用と依頼の流れを見ていきましょう。
費用の目安は6万円程度
国土交通省によると、インスペクションの費用は6万円程度とされています。公式サイトに料金を公開している会社をもとに、中古マンションのインスペクション費用を表にしました。
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会社によって3万円台から5万円台まで幅があり、交通費を含むと6万円ほどになります。バルコニーが広い住戸では割増になるケースも。交通費やオプションを含めた総額で比較しましょう。
申し込みから調査までは1〜2週間の余裕をみる
時間がかかるのは報告書づくりではなく、予約の待ち時間です。依頼が集中する時期には、1〜2週間前の申し込みが必要になることもあります。
現地での調査そのものは1〜3時間ほどで終わります。結果をその場で説明してくれる会社もあり、写真付きの報告書は数日後に届くのが一般的です。
全体の流れは次のようになります。
1.会社へ問い合わせて見積もりを取る
2.売主と仲介会社に依頼して日程を調整する
3.必要な書類をそろえる
4.現地での調査(立ち会いがおすすめです)
5.結果の説明を受け、報告書を受け取る
調査に立ち会えば、その場で気になる箇所を質問でき、報告書だけでは伝わらない状態を自分の目で確かめられるのでおすすめです。
インスペクション依頼先を選ぶときに確認したい3つのポイント
インスペクションの依頼先は、次の3つを基準に選んでみてください。
- 資格を持った人が担当するかどうか:「既存住宅状況調査技術者検索サイト」を使えば、自分で調査者を探すこともできます。不動産会社に仲介を頼んでいる場合は、調査してくれる人のあっせんを相談しましょう。
- 第三者としての立場が保たれているかどうか:買主である自分が会社を選べるかを確かめておくと安心です。
- 調べる範囲と報告書の中身がはっきりしているかどうか:どこまでが基本料金で、どこからが追加料金なのかを書面で確認しましょう。
リノベーションを前提に購入するなら、リノベーション会社に相談して、調査と工事の計画をまとめて進める方法もあります。
中古マンションのインスペクションを実施するタイミング
中古マンションのインスペクションは、どのタイミングで実施するといいのでしょうか。注意点もあわせて解説します。
売買契約の前に実施するのが原則
インスペクションを受けるなら、売買契約を結ぶ前がおすすめです。できれば買い付け申し込みの前後がいちばん効果的だといえます。
契約前なら、不具合が見つかったときに価格の交渉をする・売主に直してもらう・購入を見送るという3つの道をすべて残せるからです。契約後になると、この選択肢がぐっと狭くなります。
売主がすでにインスペクションを実施済みかどうか、確認しましょう。実施済みなら、重要事項説明で結果の概要を確認できます。マンションの調査結果は2年間有効なので、過去に受けていれば活用できる可能性があります。
実施には売主の同意が必要
買主がインスペクションを依頼する場合、売主の同意が必要です。依頼は仲介会社を通じて行います。調べる対象は売主が持っている物件のため、勝手に立ち入って計測することはできません。
壁を壊さない調査であること、1〜3時間ほどで終わることを説明しておくと、同意が得やすくなります。
人気のある物件は、インスペクションを手配している間に別の買主が先に買い付けを入れてしまうこともあるので注意しましょう。
契約後や引き渡し後に実施する場合の注意点
契約を結んだ後や引き渡しの後でも、インスペクションは受けられます。ただ、結果を交渉に使える余地は小さくなります。
契約後から引き渡しまでの間に受ける場合は、直すべき箇所を特定して、契約の内容に応じて売主に修繕を求める形になります。引き渡し前の最終確認という位置づけです。
引き渡し後に受ける場合、交渉には使えません。それでも、リノベーションの優先順位と予算配分を決める資料としては十分に役立ちます。
中古マンションのインスペクション結果をリノベーションに活かす方法
報告書で指摘された箇所は、リノベーションのときにまとめて直すのが無駄のない進め方です。物件探しの段階からリノベーション会社に相談しておくと、調査の結果をそのまま工事の計画と資金計画に反映できます。
配管や断熱など見えない部分をまとめて更新
たとえば専有部分の配管交換では、配管そのものは30万円前後でも、床や壁を壊して元に戻す工事を含めると50万〜100万円ほどになることがあります。費用の大半を占めるのが、解体と復旧だからです。
内装のリノベーションと同時に行えば、この解体費用を二重に払わずに済みます。
ユニテでは、気になる物件の報告書をお持ちいただければ、必要な工事とおおよその費用をお伝えできます。まだ物件が決まっていない段階でのご相談も歓迎しています。
ユニテが行ったおしゃれなマンションのリノベーション事例は、こちらからご覧いただけます。
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中古マンションはインスペクションで状態を把握して、納得のいくリノベーションを
インスペクションは、専門家が目で見たり計測したりして、建物の傷みや不具合の状況を調べる調査です。
- 費用は6万円程度。オプションを加えても10万円ほどに収まることが多い
- 売買契約の前に受けるのが原則。買主が依頼する場合は売主の同意が必要
- 調べられるのは専有部分が中心で、共用部分は書類で確認する
- マンションの調査結果は2年間有効なため、実施済みの物件なら活用できる
報告書に書かれた箇所を実際にどう直すのか、いくらかかるのかまでは、施工する会社でなければ分かりません。
物件探しの段階からご相談いただければ、購入費用とリノベーション費用を合わせた計画が立てられます。報告書をお持ちいただいての相談も、まだ物件が決まっていない段階でのご相談も承っています。中古マンション選びで迷われたときは、ユニテへお気軽にお声がけください。




