
二世帯住宅の種類を完全共有型・部分共有型・完全分離型に分けて解説。間取りの違いやメリット・デメリット、建築コスト、プライバシーの考え方、将来を見据えた後悔しない選び方まで分かりやすく紹介します。

株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
二世帯住宅を検討し始めると、「完全共有型」「部分共有型」「完全分離型」など、さまざまな種類があることに気づく方が多いでしょう。
しかし、それぞれどう違うのか、自分たちにはどのタイプが合っているのかはよく分からないという方も少なくありません。二世帯住宅は一度建ててしまうと、後から間取りを大幅に変更することが難しいため、最初の種類選びが非常に重要です。
この記事では、二世帯住宅の基本から間取りの種類、メリット・デメリット、選び方のポイントまでを徹底的に解説します。
「二世帯住宅にしてよかった」と思える住まいを実現するために、ご家族にとって最適な二世帯住宅を見極める判断材料として、ぜひ参考にしてください。
二世帯住宅とは
まず二世帯住宅とは何か、その基本的な定義と、二世帯で暮らすことについて解説します。
二世帯住宅の定義
二世帯住宅とは、親世帯と子世帯が同じ建物に暮らす住まいのことを指します。
一般的な一戸建てと異なるのは、複数の家族が生活の基盤を共にする点です。
玄関やキッチンなどの設備を共有するケースもあれば、生活空間を完全に分けるケースもあり、その形態は多岐にわたります。
どこまで生活を共有し、どこから独立させるかによって複数の種類に分かれる点が特徴です。
この、どこまで共有するかの設定が、二世帯住宅づくりにおける最大の検討事項といえます。
二世帯住宅を建てるメリット
二世帯住宅には、単世帯住宅には無い多くのメリットがあります。
- 親世帯・子世帯ともに安心感がある:急な病気やトラブルの際、すぐに助けを求められる距離感は大きな安心材料です。
- 子育てや介護を助け合いやすい:共働き世帯なら子供の送り迎えや留守番を親に頼みやすく、将来的に親の介護が必要になった際も負担を軽減させられます。
- 土地代や建築費を分担できる:親が所有する土地に建てる、あるいは二世帯で建築費を出し合うことで、一世帯あたりのコストを抑えながら質の高い家を建てられます。
- 光熱費や固定資産税を抑えられる場合がある:設備を共有すれば基本料金を一本化でき、税制面での優遇を受けられる可能性もあります。
特に、共働き世帯や、将来の親の介護を視野に入れている家庭には、大きなメリットがたくさんあるでしょう。
二世帯住宅を建てるデメリット
一方で、以下のようなデメリットも存在します。
- 生活音や生活リズムの違いによるストレス:起床・就寝時間や食事のタイミングが異なると、物音が気になりトラブルの元になることがあります。
- プライバシーの確保が難しい場合がある:共有スペースが多いほど、常に相手の目を気にする状況になりがちです。
- 義家族の距離が近いことで気を遣う:どんなに仲が良くても、家事のやり方や育児方針の違いから、精神的な疲れを感じる場合があります。
- 間取りの自由度が制限されることがある:それぞれの世帯の要望を1つの建物に詰め込むため、どちらかが間取りを妥協しないといけない場面が出てきます。
これらの課題は、どの種類の二世帯住宅を選ぶかによっても大きく異なります。
二世帯住宅にかかる費用や後悔しないリノベーションについてはこちらの記事もご覧ください。
実家を二世帯住宅にリノベーション!暮らしやすい住宅設計のために考えておくべきこと
二世帯住宅の間取りの3つの種類
二世帯住宅は、間取りの考え方によって大きく以下の3種類に分けられます。
・完全共有型: ほぼすべてのスペースを共有
・部分共有型: 一部の設備・スペースのみを共有
・完全分離型: すべての設備・スペースを独立
それぞれの特徴、メリット・デメリットを順に詳しく解説していきます。
完全共有型の二世帯住宅
完全共有型の二世帯住宅は、玄関・キッチン・浴室などをすべて二世帯で共有するタイプです。
完全共有型のメリット
・建築費を抑えやすい: キッチンや風呂などの水回り設備が1つで済むため、設備費や配管工事費を大幅に節約できます。
・家事や育児の協力がしやすい: 常に顔を合わせる環境のため、家事や育児の分担や協力がスムーズに行えます。
・コンパクトな敷地でも建てやすい: 設備を重複させる必要がないため、限られた土地面積でも、比較的広々とした住環境を確保できます。余ったスペースを庭や駐車場として有効活用できるのも、このタイプならではのメリットです。
「家族全員で一つの家に住む」という意識が強いご家庭や、親子の仲が非常に良く、コミュニケーションを最優先したいご家庭に向いています。
完全共有型のデメリット
・プライバシーを確保しにくい:常に親世帯または子世帯の気配を感じるため、一人でリラックスするのが難しくなります。
・生活音や来客がストレスになりやすい: 夜遅い帰宅や友人を招く際には、配慮が必要になります。
・世帯間の価値観の違いが表面化しやすい: 掃除の頻度や調理器具の使い方、冷蔵庫の中身といった、細かなことで揉めるリスクがあります。
事前に生活ルールをしっかり決めておかないと、後悔につながる可能性があります。
間取り図の具体例
1階に広めのLDKと浴室・洗面所などの水回りを集約し、2階に親世帯・子世帯それぞれの個室を配置する間取りが一般的です。
共有スペースを中心に、それぞれの個室で最低限のプライベートを確保する間取りになります。
部分共有型の二世帯住宅
部分共有型は、玄関や浴室、あるいはリビングなど、特定の場所だけを共有し、それ以外を各世帯で分けるタイプです。
部分共有型のメリット
・プライバシーと共有のバランスが良い: 「食事は別々に、お風呂だけ一緒」といった具合に、世帯間の関係性に応じた距離感を設計できます。
・建築費と住みやすさを両立しやすい: 完全分離型よりも建築費用を抑えられ、完全共有型よりプライバシーを守れるため、コストパフォーマンスが高いです。
・将来のライフスタイル変化に対応しやすい: どちらかの世帯の部屋が空いた際、別の用途に転用しやすいのも特徴です。
「ほどよい距離感で、困った時だけ助け合いたい」という現代の二世帯住宅で最も選ばれやすいタイプです。
部分共有型のデメリット
・設備の数によっては費用が増える: キッチンを2つ増設したり、玄関を2つにしたりすると、その分コストが跳ね上がります。
・共有範囲を巡って意見が分かれやすい: 「浴室は分けたいが、親は一緒にしたいと言っている」といった世帯間での意見調整に時間がかかることがあります。何となくで決めず、お互いの譲れないポイントをあげて、優先順位を明確にしておきましょう。
生活スタイルを考慮しながら「何を共有し、何を分けるか」を事前にしっかりと整理し、お互いの妥協点を見つけることが重要です。
間取り図の具体例
玄関のみ共通で、1階に親世帯のLDKと寝室、2階に子世帯のLDKと寝室を設ける「上下分離・玄関共有」パターンや、浴室のみを1階に集約して共有するパターンなど、自由度が高いのが特徴です。
完全分離型の二世帯住宅
完全分離型は、玄関・キッチン・浴室・トイレなどの生活設備をすべて別々にするタイプです。
1つの建物の中で、2つの家がくっついているような状態を指します。
完全分離型のメリット
・プライバシーを最大限確保できる: 生活動線が重ならないため、お互いの生活リズムを気にせず自由に暮らせます。
・生活リズムや価値観の違いがストレスになりにくい: 食事や入浴の時間を合わせる必要がなく、義家族への気遣いも最小限で済みます。
・将来、賃貸や売却を視野に入れやすい: 玄関から完全に分かれているため、将来的に空いた片方の世帯分を他人に貸し出すといった活用が可能です。
完全分離型のデメリット
・建築費が高くなりやすい: キッチン、風呂、トイレ、玄関など、あらゆる設備がすべて2つずつ必要になるため、3つのタイプの中で最も高額になります。
・延床面積が大きくなる: 全ての設備を2つずつ入れるため、広い敷地が必要になります。
・光熱費が増える場合がある: メーターを分ける場合はそれぞれに基本料金がかかるため、光熱費が高くなりやすいです。
計画段階から、予算や必要な敷地面積など、条件の確認が必要です。
間取り図の具体例
主に2つのパターンがあります。
・左右分離(縦割り):テラスハウスのように、左右で完全に住み分けるパターンです。上下の音を気にしなくて良いのがメリットです。
・上下分離(横割り):1階を親世帯、2階を子世帯にするパターンです。親世帯のバリアフリー化がしやすく、それぞれ階段の上り下りがないメリットがあります。
最適な二世帯住宅を後悔なく選ぶためのポイント
自分たちに合った二世帯住宅を後悔なく選ぶためのポイントをチェックしましょう。
プライバシーと生活スタイルのズレの許容度
お互いに、どこまで一緒に生活できるかを正直に話し合うことが重要です。
以下のような具体的な場面を一つひとつ想定して、どのような間取りにするかを検討しましょう。
- 朝型か夜型か
- 友人を招く頻度はどれくらいか
- シャワーの音などは気になるか
特に、上下分離の間取りの場合、寝室の上に水回りを配置しないなど、生活音に関する工夫も必要です。
家事分担を考慮した共有スペースと設備の選択
キッチンや洗濯機を共有する場合、使う時間帯や管理方法まで決めておくと、トラブルを防げます。
例えば、以下のようなルールです。
- キッチンを共有するなら、冷蔵庫の棚を分ける
- 浴室を共有するなら、入浴時間のルールを作る
もし、少しでも「気を遣いそうだな」と思うなら、ミニキッチンを設けるなどの工夫をすることもおすすめです。
二世帯住宅の種類に関するよくある質問(FAQ)
Q:二世帯住宅の種類によって登記方法は変わりますか?
A:はい、変わります。
完全分離型では、建物の一部を独立したものとして登記する「区分登記」が可能な場合があります。
一方で、完全共有型や部分共有型では、一つの建物を共有する「共有登記」になるのが一般的です。
登記方法は固定資産税や住宅ローン控除、将来の相続にも関わるため、専門家への相談が必要です。
Q:完全分離型でも行き来できる内扉は必要ですか?
A:必須ではありませんが、設ける方もいます。
雨の日でも外に出ずに親の様子を見に行ける、孫が遊びに行きやすいといったメリットがあります。
ただし扉を設ける場合でも、鍵付きにするなど、プライバシーに配慮した設計が望ましいでしょう。
Q:部分共有型で人気が高いのはどの共有スペースですか?
A:最も多いのは、玄関のみ共有するケースです。
玄関を1つにすることで、外観がすっきりし、建築コストも抑えられます。
次いで「浴室のみ共有」が選ばれています。浴室は面積を占有するため、1か所にまとめることで他の居室を広く確保できます。
あなたに向いている二世帯住宅は?
ここまで、それぞれのタイプについて紹介してきました。
最後に、あなたにあったタイプの選び方をまとめます。
▼向いている二世帯住宅の選び方
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
・完全共有型がおすすめ:建築費用を最小限に抑えたい。親子のコミュニケーションが非常に活発で、常に協力し合って暮らしたい。
・部分共有型がおすすめ:建築コストとプライバシーのバランスを取りたい。生活の基本は分けつつも、日常的に顔を合わせる機会を持っておきたい。
・完全分離型がおすすめ:お互いのプライバシーや生活スタイルを最優先し、自立した暮らしをしたい。生活リズムが大きく異なる。将来的に賃貸に出す可能性も考慮したい。
どのタイプを選ぶにしても、親世帯と子世帯の双方が納得感を持つことが重要です。
一緒に住む二世帯間で、包み隠さず本音を出し合って相談して決めるようにしましょう。
二世帯住宅へのリノベーションは弊社にご相談を
二世帯住宅を実現する方法は、新築だけではありません。
「今住んでいる実家を二世帯仕様に作り変えたい」「中古物件を購入して二世帯で住みたい」という方には、リノベーションという選択肢もおすすめです。
既存住宅の構造を活かしながら、新築よりもコストを抑えつつ、最新の設備や間取りに変更することもできます。
ご家族それぞれのこだわりや、今後のライフプラン、二世帯間の適切な距離感を反映したプランニングをご提案させていただきます。
二世帯住宅の種類選びや、リノベーションの可能性について迷ったら、ぜひ弊社ユニテまでお気軽にご相談ください。
戸建てリノベーションしたいけどよくわからない方はこちらの記事もおすすめ





