
「マンションの床をフローリングにしたい」ときに最初に確認したいのが、管理規約に書かれた遮音等級です。本記事では、マンションの床の遮音等級の読み方やポイントを解説。遮音規定を確認する方法や、管理規約をクリアする床材と工法の選び方を紹介します。
目次

株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
「マンションの床をフローリングに変えたい」と考えたときに最初に確認したいのが、管理規約に書かれた遮音等級です。
規約を開くと「LL-45」といった数字が出てきますが、それが何を意味するのか、希望する床材が使えるのかは分かりにくいですよね。
この記事では、マンションの床の遮音等級について、以下のポイントを解説します。
- 遮音等級の読み方やポイント
- 自宅マンションの遮音規定を確認する方法
- マンションの管理規約をクリアする床材と工法の選び方
- 工事前に必要な申請手続きと提出書類
マンションの床リフォームは「管理規約の遮音等級」の確認から始まる
床材を変える工事は、マンションの管理規約や使用細則の遮音基準を満たし、理事長から書面で承認を受けなければ着工できません。まず確かめたいのは、床のリフォーム工事ができるのかどうかです。
管理規約や使用細則で、床をフローリングに変えること自体を禁止している物件もあります。リノベーションを前提に中古マンションを買うなら、購入前に規約へ目を通しておきましょう。
国土交通省のマンション標準管理規約第17条では、専有部分であっても共用部分や他の専有部分に影響を与えるおそれのある修繕は、あらかじめ理事長へ申請し、書面による承認を受けなければならないと定められています。
同じ規約のコメントでは、承認が必要な工事の具体例として「床のフローリング」が挙げられています。畳やカーペットからの変更はもちろん、既存のフローリングを張り替える工事も対象です。
遮音等級(L値)とは|数字が小さいほど性能は高い
遮音等級(L値)は、上の階で出た床の音が下の階でどのくらい聞こえるかを表す数値で、数字が小さいほど遮音性能は高くなります。押さえておきたいのは、次の3点です。
- LL(軽量床衝撃音)とLH(重量床衝撃音)の違い
- LL-45とLL-40では聞こえ方がどう変わるか
- 新JIS規格のΔL等級|LL-45相当はΔLL(Ⅰ)-4
LL(軽量床衝撃音)とLH(重量床衝撃音)の違い
管理規約が求めているのは、床材で対策できるLL(軽量床衝撃音)のほうです。
LLはスプーンを落とした音やスリッパで歩く音など、軽くて硬い音を指します。床の仕上げ材にクッション性があれば和らげられる音です。一方のLHは、子どもが飛び跳ねたときのような重く低い音で、こちらは床材ではなくコンクリートスラブの厚みで性能が決まります。
規約に「LL-45以上」と書かれていれば、対象は軽量床衝撃音です。LH値まで定めている例は、それほど多くありません。
気をつけたいのは、上の階の足音が気になるからという理由で床を張り替えても、期待した静かさは得られない点です。直張りの防音フローリングの多くは重量床衝撃音を下げる働きを持たないため、ΔLL等級だけを表示すればよいとされています。
LL-45とLL-40では聞こえ方がどう変わるか
LL-45は、多くの分譲マンションが規約で定めている水準です。専門機関の基準に照らしても、望ましい性能という位置づけにあります。
日本建築学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」では、集合住宅の床衝撃音レベルについて、L-40を特級、L-45を1級、LL-50を2級、LL-55を3級としています。1級は学会がすすめる好ましい水準で、2級が一般的で標準的な水準なので、LL-45は最低ラインではなく、十分に高い基準です。
生活実感との対応例では、LL-40でほとんど気にならない状態、LL-45で上の階を意識することはあっても快適に暮らせる状態とされています。
ここで注意したいのが数字の向きです。「LL-45以上の性能」とは、LL-45かLL-40を指します。数字の大きいLL-50は、基準を下回ります。
新JIS規格のΔL等級|LL-45相当はΔLL(Ⅰ)-4
床材のカタログで今使われているのは、ΔL(デルタエル)等級という表記です。L値とは逆に、数字が大きいほど性能が高くなります。ここを取り違えると床材選びを誤るため、注意しましょう。
これまでの表示は部屋全体の防音性能を推定したものでしたが、ΔL等級はその床材だけでどれくらい音を抑えられるかを表しています。
従来のLL-45の製品の多くはΔLL(Ⅰ)-4等級にあたります。
床のリフォームについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
床のリフォームを徹底解説! 材木の選び方と費用を抑える方法
寒い床で悩んでいませんか?床からの冷えを解消する床断熱のメリットと費用
自宅マンションの遮音規定を確認する方法
自宅マンションの遮音等級を確認する方法は、おもに2つあります。
- 管理規約や細則など書類
- 自宅の床そのものの構造
本則ではなく「専有部分修繕等に関する使用細則」を見る
遮音等級の具体的な数字が書かれているのは、マンションの管理規約の本則ではなく、使用細則やリフォーム細則のほうです。
標準管理規約には申請と承認の手順は載っていますが、床材の細かいルールまでは書かれていません。そのため、内容はマンションごとに作られた規約や細則に委ねられています。
たとえば「床仕上げ材を変更する場合は、管理組合が定める遮音性能基準(LL-45以上)を満たす材料を使用する」などと記載されています。申請時にLL-45以上を証明する試験成績書などの添付を求め、基準を満たさない工事は認めないと明記しているケースなども。
手元に資料がなければ、管理会社の担当者に「専有部分の修繕に関する細則と申請様式一式」を依頼しましょう。
- 指定されている等級
- 対象となる工事の範囲
- 工法の指定
- 必要書類
遮音規定の記載が見当たらない場合は?
細則に遮音の規定が見当たらなくても、好きな床材を自由に選べるわけではありません。規定の有無にかかわらず承認は必要で、判断するのは管理組合だからです。
今の床仕上げと同じか、それ以上の遮音性能を確保しましょう。
理事会へ事前に相談するときは、使いたい床材の名前・工法・メーカーの性能資料の3点を持参します。回答を書面でもらっておけば、あとから階下の方に音の相談を受けたときにも、経緯を示せるのでおすすめです。
この事前相談には、リフォーム会社が同席することもできます。
自宅の床構造(直床か二重床か)を確認する方法
選べる工法は今の床の構造で決まるため、直床か二重床かを先に把握しておくと、打ち合わせがスムーズに進みます。
ご自宅が二重床か直床かを確認してみましょう。
- かかとで叩くと空洞のような音が響く→二重床
- バルコニーと室内の床との段差大きい→二重床
- 掃き出し窓の下枠が床から10センチ前後高い→直床
- バルコニーの床と室内の床にほとんど段差がない→直床
これらはあくまで目安であり、見た目だけで確定はできません。正確に知りたい場合は、不動産会社やリフォーム会社に問い合わせましょう。
マンションの管理規約をクリアする床材と工法の選び方
マンションの管理規約の基準を満たす床材はと工法は、以下の3つです。
- 直張りの遮音フローリング
- 乾式二重床
- 遮音マット
先に確認した床の構造によって、採用できる床材は変わります。踏み心地や無垢材が使えるかどうかも含めて比較しましょう。
直張りの遮音フローリング|やわらかい踏み心地
今の床が直床なら、遮音フローリングへの張り替えが最も一般的で、費用も工期も抑えられます。
表面の板の裏にクッション材を貼り合わせてあり、床材だけで軽量床衝撃音を和らげる作りです。下地からつくり直さずに、規約の基準を満たせます。
気をつけたいのは踏み心地です。遮音性能が高い製品ほど、歩いたときに柔らかく沈む傾向があります。製品によっては、家具の脚あとが残りやすいものもあるので注意しましょう。
採用する前にショールームで実際に歩いてみて、家族の感じ方をすり合わせるのがおすすめです。
乾式二重床|床全体で遮音性能を確保する工法
乾式二重床は、防振ゴムのついた支持脚で床の下地を浮かせ、床全体で遮音性能を確保する工法です。
床下に配管や配線を通せるため、キッチンや洗面所の位置を動かす間取り変更にも対応しやすくなります。仕上げ材の選択肢が広がる点もメリットです。
ただし、二重床が常に直張りより静かとは限りません。床下の空気の層が振動する太鼓現象によって、条件次第では軽量床衝撃音の低減量が伸びないこともあります。
今が直床の物件では、天井までの高さの制約で採用できない場合もあるため、現地調査が欠かせません。
無垢フローリングは遮音マットの併用が前提
無垢フローリングは単体で遮音等級を持たないため、そのままでは規約の基準を満たせないことがほとんどです。硬く、衝撃をやわらげる層がないため、軽量床衝撃音をほとんど下げられません。
「それでも無垢フローリングを採用したい!」という方は、以下の方法がおすすめです。
-
遮音マット(下地の緩衝材)を敷き込む
-
乾式二重床の上に仕上げる
-
遮音の下地と組み合わせた無垢複合フローリングを選ぶ
マンションの規約の書き方によっては承認されないケースもあります。「床構造としてLL-45相当の性能」を求めている場合は可能ですが、「LL-45以上を証明する試験成績書の添付」を材料に対して求めていると、遮音マットとの組み合わせでは承認されない例もあるので注意しましょう。
工事前に必要な申請手続きと提出書類
床材と工法が決まっても、マンション理事会の承認が下りるまで工事は始められません。申請の時期・必要な書類・承認の流れを見ていきます。
申請は工事の2週間〜1か月前までが目安
申請から承認までには時間がかかるため、逆算した予定を組んでおきましょう。標準管理規約では、承認するかどうかの判断は理事会の決議によるとされています。理事会が月に1回の開催であれば、承認まで1か月前後かかるケースも珍しくありません。
細則によっては、申請を受け付けたあとに工事計画を掲示し、直下階の所有者などが申し立てできる期間を設けている場合もあります。
提出期限はマンションごとに異なるため、最初に確認しておきましょう。引っ越しの日や、今の住まいの解約日から逆算して、余裕をもって準備を始めてください。
遮音性能証明書を含む提出書類をそろえる
提出するのは、申請書・設計図・仕様書・工程表・床材の遮音性能を示す資料が一般的です。通常はリフォーム会社が用意するので、マンションのリフォーム実績がある会社であれば、細則の読み取り・書類作成・管理会社とのやり取りなど、まとめて進められます。
「遮音性能がLL-45以上であることを証明する試験成績書などの写しを添付する」と細則で定めているマンションも多くあります。リフォーム会社の情報や、近隣住戸の承諾書を求められる場合もあるため、細則を確認しましょう。
承認の可否は管理組合が判断する|工事前後の近隣配慮
管理規約の基準を満たしていても、承認に条件がつく場合があります。最終的に判断するのは理事会です。
承認にあたって建物を支える骨組みへの影響・防火や防音への影響・他の住戸への影響などを考え、工事の内容が上下左右の住戸へ大きな影響を与えるおそれがあると判断されれば、理事会はその住戸の同意を求めるケースも。
工事中は理事が現場に立ち会って施工を確認したり、リフォーム会社へ写真の記録を求めたりするケースや、作業時間帯・搬入経路・エレベーターの養生といったルールを細則で決めているマンションもあります。
承認を得た工事でも、あとから共用部分や他の住戸に影響が出た場合は、工事を発注した側の責任と負担で対応する決まりです。契約書に責任の所在を書いておくとよいでしょう。
マンションリノベーションについては、こちらの記事も参考になります。
【後悔しない】中古マンションのリノベーション実現のコツ!費用相場や物件選びのポイントを解説
床の遮音規定確認と申請はマンション実績のある会社と進めよう
床リフォームがうまくいくかどうかは、細則の確認・床材と工法の選定・申請書類の3点を押さえられるかで決まります。
- 床材の変更は、管理規約や使用細則の遮音基準を満たし、理事長の書面による承認を受けてから着工する
- 遮音等級のL値は数字が小さいほど性能が高く、多くのマンションがLL-45以上を基準にしている
- 床材のカタログで使われるΔL等級は逆で、数字が大きいほど音を抑える力が強い
- 具体的な数値が書かれているのは規約の本則ではなく、使用細則やリフォーム細則
- 選べる工法は、今の床が直床か二重床かによって変わる
- 無垢フローリングを希望するなら、遮音マットや二重床との組み合わせが前提になる
- 申請には設計図・仕様書・工程表・遮音性能を示す資料が必要で、理事会の承認までに1か月前後かかることもある
ユニテでは、富山県内のマンションリフォームも手がけています。管理規約と細則の読み取りから、規約に適合する床材と工法の提案など、一連の流れをお任せください。
「この床材で承認が下りるのか分からない」「引っ越しの日までに間に合うのか不安」といった段階でも構いません。現地を拝見したうえで、規約に合うかどうかと申請にかかる期間を含めてお伝えします。
まずはお気軽にお問い合わせください。




