大きな地震が多い日本に住むには、安全性にこだわった家に住みたいと感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、地震に強い家を建てたいと考える方に向けて、耐震住宅の特徴やそのメリット、工事の内容について分かりやすく解説します。
目次
株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
大きな地震が多い日本に住むには、安全性にこだわった家に住みたいと感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、地震に強い家とはどのような家か、どのような工事が必要なのか、費用がどのくらいかかるのかといった点で迷うことも多いものです。
この記事では、地震に強い家を建てたいと考える方に向けて、耐震住宅の特徴やそのメリット、工事の内容について分かりやすく解説します。
安心できる家づくりに向けた知識を深め、理想の住まいを実現するための参考にしてください。
耐震住宅とは?
耐震住宅とは地震の揺れに対して耐えるように作られた住宅です。ただし、『耐震住宅』というワードは法律的に定められた定義はありません。
一般的には1981年に改正された『新耐震基準』を満たして建てられた家と言われています。
耐震基準は建てた年数によって以下の表のようにに分けられます。
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耐震住宅のメリット
地震に強い耐震住宅ですが、どんなメリットがあるのでしょうか。主には以下の3つが挙げられます。
- 地震への安全性が高い
- 住宅再建の負担量が少ない可能性がある
- 災害時にも自宅にて生活できる可能性が高い
以下から詳しく解説します。
地震への安全性が高い
耐震住宅は地震への耐性が高いため、安心して住むことができます。
阪神淡路大震災で最も多い死因は『建物の倒壊による圧死』であり、地震に強い家にすることで命を守ることに繋がるでしょう。
引用:【国土交通省】阪神・淡路大震災教訓情報資料集 02 人的被害
また、倒壊した家の救出作業は8割が近所の人であったというデータもあります。耐震化しておらず家が崩れてしまうと、近所の方々を倒壊した家に招き、危険な状況に合わせることになりかねません。
耐震化をすることにより家族だけでなく、周囲の人に及んでいたかもしれないリスクを避けることにも繋がるでしょう。
住宅再建の負担量が少ない可能性がある
耐震化をしておくと、地震によって家が崩れる可能性を低くできるため、住宅再建の負担を少なくすることができます。
内閣府によると被災後の生活再建にかかる費用は住宅の建築費用で2500万円であり、そこに家財や引っ越し費用を合わせると多額の費用が必要になります。
被災支援金もありますが、まかなえたのは400万円だったという報告もあり、災害後は家計に大きな負担になりかねません。
自宅が地震により倒壊したり、大きな損傷がなければ必要な費用を抑えることができ、家計の負担を減らすことができるでしょう。
災害時にも自宅にて生活できる可能性が高い
耐震住宅は地震に強い家であるため、災害後も自宅で生活できる可能性が高いこともメリットです。
家が倒壊してしまうと避難所での生活となり、様々なストレスを抱えた生活になりますが、家が無事であれば住み慣れた家で継続して生活することができます。
災害後に自宅で生活するには以下のような対策も必要になるため、耐震化と同時に対策しておきましょう。
- 水や食料、ガストイレなどの確保
- 家具を倒壊させない工夫
家の倒壊は災害後の生活に大きく関わってきます。災害後も住み慣れた環境で安心して暮らせるよう、家の耐震化を検討してみましょう。
耐震住宅のデメリット
耐震住宅や改修のデメリットについては厚生労働省のデータから以下の3つが挙げられています。
- 工事費用がかかる
- 効果があるか分からない
- 家の見栄えが悪くなる
以下から詳しく解説します。
工事費用がかかる
耐震住宅にするために工事費用がかかることがデメリットとされています。耐震改修は行う内容によって費用は変わりますが、平均100~150万円と言われており、家計を圧迫する原因といえるでしょう。
しかし、耐震診断や改修は以下のような支援制度があり、家計の負担を抑えつつ工事できます。
【住宅・建築物安全ストック形成事業】※住宅のみ
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【住宅金融支援機構による融資制度】※個人向け
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引用:【国土交通省】住宅・建築物の耐震化の現状と課題について
また、各自治体によっても支援制度はあるため、お住まいの地域の情報を入手することで安心して工事を受けることができます。
日本は地震が多い国であるため、耐震化については注力しています。今後も支援制度は検討されるため、最新情報は国土交通省の公式サイトでチェックしておきましょう。
効果があるのか分からない
地震が起きないと効果があるのか分からないため、必要性を感じにくいことがデメリットです。
『今住んでいる地域は大きな地震が起きないかも』『自分の家は地震で崩れないだろう』など、耐震化が不要かもしれないと感じてしまうことも欠点と言えるでしょう。
しかし、阪神淡路大震災では、耐震化が行われていない旧建築基準により建てられた家の約64%が大きな被害を受けた報告もありました。
建物の崩れは命を危険にさらすことになるため、しっかりとした対策が必要です。
家の見栄えが悪くなる
耐震性を高めるための設計や部材が、家の見た目に影響を与えることもあります。
特に、耐力壁を使う場合は家の強度を上げるために窓や大きな開口部を設けづらく、結果としてデザインが制限されることも。
しかし、工事方法は様々であるため、業者と相談し希望に沿った家作りをすることができます。窓の工事としては耐震できる窓枠を使うことで大きな窓と耐震性向上どちらも実現することができます。
工事の際に『窓などの開口部を残して欲しい』『外観を変えずに工事して欲しい』など、要望をしっかり伝えることで希望と耐震性どちらも満足できる工事になるでしょう。
耐震改修を行うならまず『耐震等級』を確認
耐震等級とは建物の地震に対する強さを示す指標です。
地震に対する耐性に応じて1~3に分けられており、数字が大きいほど地震への耐性が高く、以下のように分けられています。
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引用:国土交通省【耐震性能を等級で確認して、安心の住まいづくり】
耐震住宅や改修を行いたい場合、まずは現在の耐震等級を確認しておきましょう。住宅性能評価表は家の引き渡しの際に渡されることが多いです。もしなくしたした場合や、記載がないときは家を建てたハウスメーカー等に相談してみましょう。
耐震等級の調べ方については『耐震等級の調べ方は?地震や災害に備えて知っておきたいポイントも紹介』で解説しているため、参考にしてください。
耐震住宅にするなら改修を検討する
地震に強い家にするなら、現在ある家を地震に強い家にする工事である『耐震改修』を検討しましょう。
耐震改修は大きく分けて以下の3つになります。
- 耐震補強:地震のゆれに耐えられるよう建物の強度を高める
- 制震補強:地震のゆれを吸収し、建物のゆれを小さくする
- 免震補強:建物を基礎から独立させてゆれを建物に伝わりにくくする
以下から詳しく紹介します。
耐震補強
耐震補強とは地震の揺れに耐えられるように、建物そのものの強度を高める工事方法です。耐震補強では以下のような方法があります。
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耐震工事の方法は様々であるため、家の構造や予算から選びましょう。
制震補強
制震では揺れを建物の中の装置で吸収し、建物全体の揺れを小さくする工事方法です。装置が揺れのエネルギーを吸収することで、建物の揺れ・幅・時間を短くし、ダメージを少なくすることができます。
制震は以下のような方法があります。
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免震補強
免震補強では建物を基礎から独立させ、間に免震装置をつけることで揺れを建物に伝わりにくくする補強方法です。
建物の損傷が抑えられるだけでなく、家具などの家の中の損傷も減らすことができるため安全性が高まります。
免震は装置導入のコストが高く、装置のメンテナンスも必要であるため費用が多くかかる傾向にあります。
地震の発生が多く、地盤がゆるい地域は検討した方がいいですが、まずは耐震補強や制震補強から検討し、必要であれば導入するとよいでしょう。
耐震と免震の違いは『耐震と免震の違いを解説!戸建て住宅に合うのはどっち?』で解説しているため、参考にしてみてください。
家の間取りを変えたい人はリノベーションもおすすめ
耐震工事とリノベーションは同時に行うこともできます。リノベーションでは以下のような工事も可能であり、家の快適性を向上させることが可能です。
- 間取りを変更しリビングを広くできる
- 内装を変えて家の雰囲気をガラっと変える
- 断熱性を上げて冬でも快適な住まいに
同時に行うことで住宅の安全と快適さをどちらも改善できるため、家全体を見直したい人はリノベーションも検討してみましょう。
リノベーションについては『リフォームとリノベーションの違いとは?費用相場やメリット・デメリットを比較』で解説しているため、参考にしてください。
耐震住宅でよくある質問
耐震住宅でよくある質問をまとめたので、以下から詳しく解説します。
- 木造住宅と鉄筋住宅はどちらが地震に強い?
- 耐震住宅を建てたいときはどこに相談すればいい?
木造住宅と鉄筋住宅はどちらが地震に強い?
木造と鉄筋コンクリート造は、一概にどちらが地震に強いとは言い切れません。
両者にはそれぞれ特徴があり、適切な設計と施工が行われれば、どちらも十分な耐震性を持つことができます。
現行の耐震基準を満たしていれば、木造・鉄骨造関係なく震度6~7程度に達する程度の地震でも倒壊・崩壊するおそれのない建物と言われています。
耐震住宅を建てたいときはどこに相談すればいい?
耐震住宅や改修は以下の場所で相談ができます。
- 建物のある市区町村の耐震担当窓口(※助成制度が利用できる場合があるため相談必要)
- ハウスメーカー・工務店
- リノベーション業者
耐震性や建築コスト、デザイン性なども含めて比較しながら、自分の希望に合った耐震住宅の計画を進めていくと良いでしょう。
耐震住宅の施工事例
耐震住宅はリノベーションでも実現できます。以下からはユニテでの施工事例を紹介します。
今回の事例は中古住宅を購入され、ユニテでリノベーションしお住まいになられました。耐震改修を施すことにより、長く安心して住める家になりました。
以下は必要な柱だけを残し、広々としたリビングへ改修した写真です。照明はダウンライトを使用し、天井の相調を引き立たせました。
残さないといけない柱も工夫し、お部屋の雰囲気に合わせて改修を行いました。
詳しくは以下で紹介しているため、参考にしてみてください。
耐震住宅をお考えの方はユニテへ
耐震工事をお考えの方はユニテへお任せください。
耐震×リノベーションを行うことで安心で快適な暮らしを実現することができます。耐震などの基本性能を重視したリノベーションをお考えの方は、ぜひ気軽にご相談ください。
また、ユニテのリノベーションの例は「リノベーション事例12選!ビフォーアフターを物件タイプ別に紹介します」で解説しています。ぜひ、参考にしてみてください。
耐震住宅のまとめ
耐震住宅とは地震の揺れに対して耐えるように作られた住宅ですが『耐震住宅』というワードは法律的に定められた定義はありません。
一般的には1981年に改正された『新耐震基準を満たして作られた家』と言われています。
1981年以前に建てられた家は『旧建築基準』であり、大きな地震が起きた時の倒壊リスクが高いと言われているため、耐震改修を検討しましょう。
家の雰囲気や間取りも変えたい場合はリノベーションも同時に行うことをおすすめします。同時に行うことで住宅の安全と快適さをどちらも改善できるため、家全体を見直したい人はリノベーションも検討してみましょう。