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長期優良住宅はリフォームできない?OKな事例と失敗しない手続き

長期優良住宅はリフォームできないと、お考えの方も多いのではないでしょうか。長期優良住宅は注意点や手続きが必要ですが、リフォームは可能です。今回は、長期優良住宅でリフォームできるケースや注意が必要なケース、よくある質問を解説します。

監修者
一級建築士/O.Fumihiro
一級建築士
O.Fumihiro

株式会社ユニテ 設計部

設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。

【 保有資格 】

一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士


「長期優良住宅に認定されたらリフォームできないの?」「長期優良住宅をリフォームすると、せっかくの税制優遇がなくなってしまうの?」そんな心配をお持ちの方も多いのではないでしょうか。長期優良住宅は注意点や手続きが必要ですが、リフォームは可能です。

 

今回は、長期優良住宅はリフォームできるのか解説します。
 

  • 長期優良住宅でリフォームできるケース・注意が必要なケース
  • 長期優良住宅をリフォームする流れ
  • 長期優良住宅のリフォームに関するよくある質問と回答

 

大切なマイホームの価値を守りながら、より快適な住環境を手に入れたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
 

 

長期優良住宅はリフォームできないのではなく「ルール」がある

長期優良住宅はリフォームできますが、認定時に定めた家の性能を維持するために、ルールを守った手続きが必要です。このルールを理解し、必要な手続きを正しく行えば、長期優良住宅の認定を保ちながら理想のリフォームができます。

長期優良住宅とは

長期優良住宅とは、良い状態で住み続けられるように構造や設備が一定の基準を満たし、国から認定を受けた住宅のこと。厳しい性能基準をクリアする必要がありますが、税制優遇や補助金を受けられ、住宅ローンの金利引き下げなどのメリットがあります。

 

長期優良住宅が受けられる大きな税制優遇は、認定された高い性能を維持し続けることが条件となっています。そのため、住宅の性能を下げてしまうような無計画なリフォームを行うと、認定が取り消され、税金の優遇や住宅ローン控除が使えなくなってしまうので注意が必要です。
 

リフォームの鍵を握る「維持保全計画書」

長期優良住宅の認定を受ける際には、維持保全計画書の提出が義務付けられています。長期優良住宅の認定を維持するためには、この維持保全計画書に記載されたメンテナンスを実行する義務があるのです。

 

 

おもな記載内容

特徴

点検部位

構造躯体

基礎・土台・床など

 

屋根・外壁・開口部等

屋根・外壁・天井面など

 

配管設備

給水管・排水管・換気ダスト

おもな点検項目

ひび割れ・欠損・漏水など部位によって異なる

劣化が確認された項目について、その内容

劣化が確認された場合に記載

劣化箇所の補修内容

(補修を行わない

場合はその理由)

交換及び固定器具の更新など、劣化が確認された箇所に行った補修内容を記載する

点検の時期

新築後5年、10年、15年...といった定期的なスケジュール

定期的な手入れ等

住宅を長持ちさせるために必要なこと

更新・取替の時期、内容

20年で全面葺き替えを検討など、将来的な対応内容を記載

参照:長期優良住宅化リフォーム推進事業

 

長期優良住宅のリフォームをお考えの際は、新築時の維持保全計画書を確認し、内容を変更する必要があります。維持保全計画の内容を踏まえた上で、リフォームを計画しましょう。

長期優良住宅でもリフォームできるケース・注意が必要なケース

長期優良住宅でのリフォームは、工事の種類や規模によって必要な手続きが異なります。

1.申請不要なリフォーム

長期優良住宅の構造部分や省エネ性能に変更を加えないリフォームであれば、申請は必要ありません。内装の模様替え・同等以上の性能での設備交換・外装の軽い補修など、維持保全計画が変わらない内容が対象です。判断に迷う場合は、必ず事前にリフォーム業者や行政に相談しましょう。

 

申請や手続きが不要なリフォームでも、リフォーム工事の契約書・図面・計算書などは、メンテナンス記録として保存が必要です。
 

2.要注意!計画変更の申請が必要なリフォーム

長期優良住宅で計画変更の申請が必要なリフォームは、認定された性能基準に大きく影響する工事や、維持保全計画の根本的な変更をともなう工事です。

 

申請が必要となる工事
  • 耐震性能に影響する工事
  • 大規模な増築工事
  • 断熱性能を変更する工事
  • 気密性能に影響する工事
  • 配管・設備の大幅変更
  • 住戸面積の変更
  • 将来のバリアフリー化を困難にする工事

 

上記の工事は、性能基準への影響を事前に評価し、工事着手前に変更認定を申請・取得する必要があります。

リフォーム内容で申請がいるのかチェックしよう

予定しているリフォーム工事が、どの種類に当てはまるかを確認して、適切な手続きを行いましょう。

 

 

申請 必要or不要

リフォーム内容

具体的な例

不要

内装の変更・模様替え

・壁紙(クロス)の張り替え

・塗装の塗り直し(同色または類似色)

・珪藻土・漆喰等の自然素材への変更

・天井仕上げ材の変更

・フローリングの張り替え(同等以上の性能)

・カーペット・畳からフローリングへの変更

・クッションフロアの張り替え

・床暖房の後付け

室内建具の交換

・室内ドアの交換(開口寸法変更なし)

・収納扉の交換

・引き戸への変更(開口部変更なし)

・ドアノブ・取っ手の交換

キッチン

・システムキッチンの交換(位置変更なし)

・ガスコンロ・IHクッキングヒーターの交換

・食器洗浄機の設置・交換

浴室

・ユニットバスの同規模交換

・洗面化粧台の交換(位置変更なし)

・浴槽のみの交換

トイレ関連

・便器の交換(洋式→洋式)

・ウォシュレットの設置

・手洗い器の設置(配管工事を伴わない)

外装・外観

・外壁の塗り替え(同色または類似色)

・屋根の塗り替え

・玄関ドアの交換(同サイズ・同性能以上)

・窓シャッター・雨戸の後付け

・バルコニー手すりの修理

・カーポートの設置

・駐車場の舗装

必要

耐震性能に影響する工事

・耐力壁の撤去・移動・新設

・柱・梁の撤去・変更

・基礎の変更・補強

・構造用合板・筋交いの撤去・変更

・太陽光パネルを設置する

大規模な増築

・床面積を10㎡以上増加させる増築

・2階建てを3階建てにする

・建物の高さを変更する

・増築する

省エネ性能に影響する工事

・断熱材の撤去・性能変更

・開口部の大幅な変更(サッシ性能の低下)

・外壁材の性能を下げる変更

・屋根断熱から天井断熱への変更

配管・設備の大幅な変更

・給排水管の経路を大幅変更

・点検口の削除・位置を大幅変更

将来のバリアフリー化を困難にする工事

・廊下幅を狭くする

・段差を新たに設ける

・手すり設置用下地の撤去

・車椅子対応が困難な間取りへ変更

失敗しない!長期優良住宅をリフォームする流れ

長期優良住宅をリフォームする際は、以下のステップをふめばスムーズに進みます。

 

1.専門家へ相談する
2.「維持保全計画書」と「設計図書」を確認する
3.リフォーム内容を検討し「変更申請」が必要かを判断する
4.所管行政庁へ申請する
5.認定後に工事をスタートする

STEP1:専門家へ相談する

長期優良住宅は、耐震性・省エネ性・劣化対策など、法律で定められた厳しい基準があります。リフォームによってこれらの性能が損なわれないように、専門家へ相談しましょう。

 

先ほどご紹介したような申請が不要なリフォームは、特別な認定手続きは必要ありません。しかし、長期優良住宅としての価値を維持するため、すべての工事記録の適切な保存・管理が求められます。

 

まずは、家を建てた工務店・ハウスメーカーに相談しましょう。設計図書や計画書を把握しているので、どのリフォームに申請が必要か把握しやすいです。

 

施工会社がわからない場合は、長期優良住宅に詳しい工務店・リフォーム業者に相談しましょう。ユニテは、多くのリフォーム・リノベーションに携わっています。長期優良住宅に詳しいスタッフに、お気軽にご相談ください。

STEP2:「維持保全計画書」と「設計図書」を確認

性能を正しく理解し適切なリフォーム計画を立てるために、「維持保全計画書」と「設計図書」を確認しましょう。
長期優良住宅では、建物を長く良好な状態で使用するための維持管理が義務づけられています。
今回のリフォームが計画に沿ったものか、変更する必要があるのかを維持保全計画書で確認しましょう。

 

設計図書には、建物の構造・断熱・劣化対策など、建物の性能の根拠が記載されています。リフォームで長期優良住宅として認定された性能を損なわないよう、現状を正しく理解しましょう。

STEP3:リフォーム内容を検討し「変更認定申請」が必要かを判断する

専門家と相談しながら、長期優良住宅の性能を維持できるリフォーム計画を立てましょう。
ご自宅の増築などリフォームが「認定計画の変更」にあたる場合、都道府県や市区町村に対して工事着工前に申請が必要です。
一般的に申請に必要な書類作成は、工務店やリフォーム業者が代行してくれるので安心してくださいね。
 

STEP4:所管行政庁へ申請し、認定後に工事スタート

都道府県や市区町村に計画変更の申請をして、変更認定通知書が交付されてから工事をスタートさせます。変更認定申請には、申請書類の作成費用や申請手数料がかかります。また、申請から承認まで時間がかかるため、通常のリフォームよりも工期が長くなるので注意しましょう。

 

リフォーム工事が完了したら、工事が計画通りに行われたことを示す報告書などの提出が必要な自治体もあります。
申請の必要がないリフォームも、工事完了後は工事内容を示す図面や写真などをリフォーム履歴として保管しましょう。

気になる疑問を解消!長期優良住宅のリフォームに関するお悩み

ここからは、長期優良住宅をリフォームする際によくある質問をまとめました。

Q. もし無断でリフォームしてしまったらどうなるの?

増築など申請が必要なリフォームを無断で行なった場合、長期優良住宅の認定が取り消され、受けた税金の優遇措置を返還しなければならなくなるリスクがあるので注意が必要です。

 

リフォームが、長期優良住宅の構造の安全性や省エネ性などに影響を与えるものだった場合、認定を行った市区町村などは認定を取り消せます。認定が取り消されると、固定資産税の減額措置の打ち切りや税制優遇が受けられなくなるだけでなく、罰金や返還を求められる可能性も。

 

長期優良住宅をリフォームする際は自己判断せず、工務店など専門家へ相談しましょう。
 

Q. 申請手続きにかかる費用は?期間の目安は?

申請手続きにかかる費用は、専門家(建築士など)に支払う「設計・図書作成費用」と、市区町村などに支払う「申請手数料」があります。

 

変更認定申請には、変更後の住宅が長期優良住宅の基準を満たしていることを証明するための、専門的な書類や図面(設計図書)の作成が必要です。設計・図書作成費用や期間は、リフォームの規模や内容、依頼する専門家によって異なります。

 

申請書類を窓口に提出し、審査を経て「変更認定通知書」が交付されるまでは、自治体によって費用や期間が異なるので、お住いの各市町村のホームページなどを確認しましょう。

 

申請が必要ないリフォームと比べると、費用と時間がかかるのを考慮してリフォームを計画することが大切です。

Q. 中古で購入した長期優良住宅。誰に相談すればいい?

まずは、物件購入時に売主から引き継いだ書類を確認します。「書類が見つからない」「そもそも引き継いでいない」という場合は、物件を購入した不動産会社に問い合わせましょう。売主や、新築時の施工会社・設計事務所の情報を教えてもらえる可能性があります。

 

「何から始めればいいかわからない」という方は、長期優良住宅の制度に詳しいリフォーム会社などに相談しましょう。ユニテは大切な住まいの価値を守り、快適な空間へと生まれ変わらせた豊富なリフォーム・リノベーション実績があります。まずはユニテへお気軽にご相談ください。

Q. 太陽光パネルの設置は、必ず申請が必要?

長期優良住宅に太陽光パネルをあとから設置する場合、ほとんどのケースで事前の「変更認定申請」が必要となります。太陽光パネルの重量が加わると、国が定める耐震等級などの基準を満たさなくなる可能性があるからです。

 

また、太陽光パネルは省エネ設備なので、省エネルギー対策の計画が変わるため、性能が向上する場合でも手続きが必要です。

Q5. 長期優良住宅は手間と費用がかかるから、リフォームしない方がいい?

「手続きが面倒だし余計な費用もかかるなら、リフォームしない方がいいのでは?」と感じる方も多いでしょう。どんなに良い家でも、時間とともに暮らしは変わります。設備の老朽化は進み、ライフスタイルに合わない家での暮らしは、日々のストレスにつながります。

 

面倒な手続きも住宅の価値を守る未来への投資と考え、リフォームで毎日の快適さを手に入れましょう。

長期優良住宅はリフォームできる!手続きすれば快適で理想の住まいに

長期優良住宅はリフォームできないのではなく、定めた家の性能を維持するために、ルールを守る必要があります。長期優良住宅の家の構造や、省エネ性能に影響するリフォームは申請が必要です。一方で、内装の模様替え・同等以上の性能での設備交換・外装の軽い補修などは申請する必要がありません。

 

以下の表を参考に、検討しているリフォーム工事がどのカテゴリーに分類されるかを判断し、適切な対応を取りましょう。

 

 

申請 必要or不要

リフォーム内容

具体的な例

不要

内装の変更・模様替え

・壁紙(クロス)の張り替え

・塗装の塗り直し(同色または類似色)

・珪藻土・漆喰等の自然素材への変更

・天井仕上げ材の変更

・フローリングの張り替え(同等以上の性能)

・カーペット・畳からフローリングへの変更

・クッションフロアの張り替え

・床暖房の後付け

室内建具の交換

・室内ドアの交換(開口寸法変更なし)

・収納扉の交換

・引き戸への変更(開口部変更なし)

・ドアノブ・取っ手の交換

キッチン

・システムキッチンの交換(位置変更なし)

・ガスコンロ・IHクッキングヒーターの交換

・食器洗浄機の設置・交換

浴室

・ユニットバスの同規模交換

・洗面化粧台の交換(位置変更なし)

・浴槽のみの交換

トイレ関連

・便器の交換(洋式→洋式)

・ウォシュレットの設置

・手洗い器の設置(配管工事を伴わない)

外装・外観

・外壁の塗り替え(同色または類似色)

・屋根の塗り替え

・玄関ドアの交換(同サイズ・同性能以上)

・窓シャッター・雨戸の後付け

・バルコニー手すりの修理

・カーポートの設置

・駐車場の舗装

必要

耐震性能に影響する工事

・耐力壁の撤去・移動・新設

・柱・梁の撤去・変更

・基礎の変更・補強

・構造用合板・筋交いの撤去・変更

・太陽光パネルを設置する

大規模な増築

・床面積を10㎡以上増加させる増築

・2階建てを3階建てにする

・建物の高さを変更する

・増築する

省エネ性能に影響する工事

・断熱材の撤去・性能変更

・開口部の大幅な変更(サッシ性能の低下)

・外壁材の性能を下げる変更

・屋根断熱から天井断熱への変更

配管・設備の大幅な変更

・給排水管の経路を大幅変更

・点検口の削除・位置を大幅変更

将来のバリアフリー化を困難にする工事

・廊下幅を狭くする

・段差を新たに設ける

・手すり設置用下地の撤去

・車椅子対応が困難な間取りへ変更