無機質な部屋にしたいけど分からない、失敗したくないという想いをお持ちではないでしょうか?私たち株式会社ユニテが30年間様々な経験から、無機質な部屋を再現するコツやインテリアなどをまとめてみました。
株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
「無機質な部屋は賃貸で再現できない?」
「ナチュラルテイストの部屋で再現するのは難しい?」
近年、スタイリッシュでクールな印象の「無機質な部屋」に憧れている人が増えてきています。
しかし、実際に再現するとなると、具体的なイメージが沸かず悩んでいる方も多いようです。
この記事を読めば、無機質な部屋の定義が理解でき、具体的な再現方法も把握できます。
新築やリノベーションを検討している方はもちろん、賃貸でも無機質な部屋は再現可能です。
インテリア選びのコツについても解説しますので、ぜひ理想の住まい実現に役立ててください。
【無機質な部屋とは】言葉の意味とテイスト
「無機質」とは、元来「無機物をつくる元素」のことを指します。
生体を構成する元素である「酸素・炭素・水素・窒素」以外の元素の総称で「命が感じられない様子」をあらわす時にも使われる言葉です。
つまり、無機質な部屋は「命が感じられない様子」が特徴的な部屋ということになります。
無機質な部屋の特徴は以下の通りです。
- 冷たい感じがする(木材などがあまり使われていない)
- 物が少なく生活感がない
日本の家屋では、内装からインテリアまで木材を使うのが一般的です。
特に、伝統的な和室などは自然の風土が感じられるような内装になっています。
しかし、無機質な部屋は、自然の温かみを払拭した冷たい印象がメインです。
生命を感じられるような素材はあまり使わず、かわりにコンクリートや鉄が剥き出しの無骨な内装を採用しています。
また、無機質な部屋の特徴は構造に関するものだけではなく、お店や展示場のように「そこに住んでいる気配が感じられない部屋」という点も含んでいます。
上記の2つの意味を加味してコーディネートすることにより、クールでスタイリッシュな印象の部屋に仕上がるのです。
【再現方法】無機質な部屋をつくる3つのコツ
無機質な部屋をつくるコツは、大きく分けて3つです。
- 部屋のトーンを抑える
- 素材・デザイン・質感にこだわる
- 生活感をなくし余白をつくる
「無機質な部屋」のテーマを汲み取って再現するためには、まずコツを掴むことが大切です。
インテリアや内装のコーディネートに悩んだら、上記のコツに戻って考えてみることをおすすめします。
1.部屋のトーンを抑える
部屋のトーンを抑えることで、生活感のないクールな印象になります。
無機質な部屋のベースカラー(メインカラー)におすすめの色は以下の通りです。
- モノトーン(白黒)
- シルバー
- グレー
色にはさまざまな効果があります。
上記は「無彩色」と呼ばれるカラーで、無機質さを演出しやすいのが特徴です。
黒を基調にすればクールな印象に、白を基調にすると清潔感や上品さが演出できるでしょう。
人が生活している感じをなくすことが大切です。
一方、「有彩色」と呼ばれるカラフルな配色は、温かみを感じるためなるべく避けてください。
特に「赤・イエロー・オレンジ」などの暖色系や、自然を連想させるグリーン系はアクセント程度に留めましょう。
2.素材・デザイン・質感にこだわる
無機質感を演出するためには、インテリアや内装の素材・デザインにこだわることも大切です。
無機質な部屋と相性がいい素材は、以下が挙げられます。
- ガラス
- コンクリート
- 金属
- プラスチック
- レンガ
- スチール
基本的に無骨で冷たい印象の「人工物」をチョイスすれば、無機質感を演出できるでしょう。
また、再現したいテイストによってデザインを決めるのもおすすめです。
デザイン | 再現したいテイスト |
インダストリアル風 | 無骨でかっこいい印象 |
クリア風 | スタイリッシュ・レトロ感 |
近未来風 | スタイリッシュ |
インダストリアル風とは、工場街を連想させるような建築資材が剥き出しのテイストです。スチール・コンクリート・レンガなどの素材が該当します。
「錆加工」されたインテリアを取り入れるとヴィンテージ感がプラスされ、より大人っぽい印象になるでしょう。
艶のあるクリア風デザインは、スタイリッシュかつどこか懐かしい印象を持つデザインです。
クリア素材の組み合わせは、部屋全体のイメージも重くなりすぎないので、女性にもおすすめします。
さらに、シルバー・スチール素材を組み合わせれば、スタイリッシュな近未来風テイストを演出できるでしょう。
シャープで冷たい印象の素材がメインなので、曲線モチーフのデザインでも無機質感が演出できます。
3.生活感をなくし余白をつくる
生活感をなくし、物を少なく見せることも重要なポイントです。
余計なものが散らからないよう、収納や目隠しにこだわるといいでしょう。
具体的には、以下のような工夫をおすすめします。
- リビングに十分な収納量を確保する
- コンセントが目立たないようにする
- 机や床の上に極力物を置かない
- 使う頻度・量に合わせて収納場所を決める
- 取り出しやすいように工夫する
無機質な部屋は、通常の部屋よりも収納スペースの確保が必要です。
ベッドやテーブルの下に収納がついている家具をおすすめします。
また、以下で紹介するコツは上級テクニックですが、うまく取り入れればワンランク上のスタイリッシュな暮らしが叶うでしょう。
見せる収納でおしゃれに
規則的に並べる「見せる収納」をすることにより、生活感をなくす方法もあります。
整然と並べられているとお店のディスプレイのように見えるため、あえて飾ってみるのもいいでしょう。
- 有孔ボード
- 壁掛けディスプレイラック
- ディスプレイ用のアクリル棚
- ウォールポケット
「同じ大きさや形のものを、等間隔できっちり収納する」ことが、無機質な部屋における見せる収納のコツです。
たとえば、有孔ボードに等間隔になるようフックを取付け、帽子を飾るとスタイリッシュに収納できます。
ラックを利用してCDや本などを規則的に並べ、表紙が見えるように飾るのもいいでしょう。
コレクションをディスプレイするような美しさを意識すると、より生活感を感じにくくなります。
水回りは目隠しや収納を活用
水回りは特に生活感が出やすい場所なので、目隠しや収納への配慮を徹底してください。
- 冷蔵庫・食器棚・パントリーといった生活感が出やすい部分を奥にまとめる
- 冷蔵庫などの家電にダークカラー・マットカラーをチョイスする
- 食器や調理器具は棚の中に収納しておく
- ランドリーに目隠しをする
- ものを置かないことを徹底する
特に、キッチンは見せたくないものを隠すような工夫が必要です。
食料品は生活感が出やすいため、リビングからパントリーが見えないようなレイアウトが理想的でしょう。
冷蔵庫をキッチンの奥に配置したり、スタイリッシュなデザインの家電を選んだりして、無機質な雰囲気にマッチさせてください。
また、洗濯物も生活感が出やすい部分になるので、ランドリーへの目隠しが必要です。
蓋つきボックスや布張りのスチールカゴなどでおしゃれに収納しつつ、中身を見せないよう配慮してください。
さらに、水回りにホワイトインテリアを採用するのもおすすめです。徹底的に物を置かない工夫をすることで、一気に生活感を払拭できます。
無機質な部屋にピッタリの内装とインテリア
無機質な部屋づくりのコツが把握できたら、内装やインテリア選びをおこないましょう。
新築やリノベーションは、内装からこだわれるのがメリットです。施工業者に相談しながら部屋づくりができるため、無機質な部屋が比較的再現しやすいでしょう。
ただし、一度施工したら戻せないので注意が必要です。
デザインだけでなく、住み心地などもよく検討してから決めるようにしてください。
また、賃貸で無機質な部屋を再現する場合は、インテリア選びが重要になります。
シンプルな内装であれば、賃貸でも無機質な部屋づくりは可能です。
ここからは、無機質な部屋づくりにピッタリの内装やインテリアについてみていきましょう。
【新築・リノベーション】無機質な部屋づくりにおすすめの内装
内装からこだわる場合は、以下の部分に無機質なテイストを再現すると、一気に雰囲気が出るのでおすすめです。
- 壁や床
- 天井
- キッチン
無機質な部屋に使われる内装を把握しておけば、新築やリノベーションのケースだけでなく、賃貸のケースでも応用できます。
壁や床
面積の広い壁や床にこだわれば、部屋の印象がガラッと変わるでしょう。無機質っぽさを演出するなら、以下の素材がおすすめです。
- コンクリート
- モルタル
- レンガ
- タイル
ただし、壁の塗装などはハードルが高いというケースもあるでしょう。
その場合は、壁紙でイメージチェンジするのも1つの手段です。
上記のデザインを模したものを採用すれば、リノベーションをしなくても十分に雰囲気が出ます。
さらに、ビニール製のリメイクシートなどを使えば、原状復帰も簡単です。ビニール製なら汚れた時も水拭きですぐキレイにできます。後から剥がせるため、模様替えしたくなってもすぐ変更できるのです。
また、雰囲気を出すために床にもこだわってみるのもいいでしょう。
たとえば、鉄筋コンクリート造のマンションの場合は、床面をあえて土間のようなコンクリート仕上げにするのも1つのアイデアです。スタイリッシュな印象になるだけでなく、傷や汚れが気になりにくくなるメリットもあります。
ただし、寝室・リビングなどの居住スペースがコンクリートだと、寒々しい印象になってしまう可能性があるので注意しましょう。
土間コンクリートを採用するなら、玄関・廊下・キッチン周りなどが適しています。
天井
マンションをリノベーションする場合などは「スケルトン天井」にするとグッと雰囲気が出るでしょう。スケルトン天井は、躯体が剥き出しになった天井のことで、クロスを貼らないぶん天井が高くなるのが特徴です。
天井の高さが必要なスタジオなどによくみられる内装ですが、デザイン性が高いことから近年では店舗やオフィスにも採用されています。
スケルトン天井の具体例は以下の通りです。
- コンクリート下地が露出している
- 配線・ダクトが剥き出し
コンクリートが剥き出しになったラフな質感を楽しんでもいいですし、あえて塗装して雰囲気を変えるのもいいでしょう。また天井が高いため開放感も演出できます。
秘密基地のような、オリジナリティのある特別な空間にしたい場合にもおすすめの内装です。
キッチン
キッチンに採用する素材やデザインにもこだわるといいでしょう。無機質な部屋にマッチするキッチンは以下の通りです。
- オールステンレスのキッチン
- モルタルのキッチンカウンター
- コンクリート・タイルの床材
- モノトーン・シルバー基調
無機質な部屋に多いのが、オールステンレスのキッチンです。
見た目のスタイリッシュさはもちろん、変色しにくいため耐久性が高く、汚れも拭き取りやすいという魅力があります。
また、カウンターや腰壁にモルタルなどを採用するのもおすすめです。一気に雰囲気が出て、無機質なテイストとマッチしやすくなるでしょう。
使用するカラーの彩度を抑えぎみにすれば、よりスタイリッシュな印象に仕上がります。
【賃貸】無機質な部屋づくりにおすすめのインテリア
全体的な家具のテイストに関しては、先述したコツを押さえたものを採用するのがいいでしょう。
ここからは、無機質な部屋におすすめの「インテリア小物」に焦点を当てて、解説していきます。
無機質な部屋づくりでこだわるべきインテリア小物は、以下の通りです。
- 照明
- ダストボックス(ゴミ箱)
- 収納家具
- 観葉植物
参考画像もあわせて紹介していきますので、イメージづくりの参考にしてみてください。
- 吊り下げ式のペンダントライト
- モノトーン・金属製・ガラス製
- 電球が剥き出しのデザイン
- ワイヤーランプシェード
無機質な部屋の照明はモノトーン・金属製のものが基本です。
シーリングよりも吊り下げ式のペンダントライトのほうが、より雰囲気が出るでしょう。
ガラス製の照明を選ぶなら、無色透明のものをおすすめします。
和紙や木製のもの・カラフルなものを選んでしまうと、温もり感が出てしまう可能性があるので注意です。
無骨でかっこいいデザインを選ぶと失敗しにくくなります。
ダストボックス(ゴミ箱)
ゴミ箱はどうしても生活感が出てしまいがちです。
しかし、デザイン性の高いものを選ぶことにより、インテリアの1つとして空間に馴染ませることができます。
おすすめはシルバーのダストボックスです。
また、工業的な印象のスチール缶・マットな質感のゴミ箱も無機質な部屋に適しています。
中身が見える骨組みだけのスケルトンタイプもおすすめです。
どうしても生活感が出てしまう場合は、棚の中にゴミ箱を収納してしまう方法も検討してみるといいでしょう。
- 黒やシルバー
- 金属と木材を組み合わせた棚
- スチール・アイアンラック
- ワイヤーバスケット
上記はヴィンテージ感がありつつシンプルなテイストのため、どんなものにも合わせやすいメリットがあります。
収納家具自体のデザイン性が高ければ、日用品を収納してもスタイリッシュな印象になるでしょう。
たとえば、ワイヤーバスケットなら、中身が多少雑多でもおしゃれに感じられるのです。
一方、ごちゃごちゃするのが気になる場合は、オープン棚よりも扉付きの収納をおすすめします。見た目がシンプルになり目隠しもできるので、生活感が払拭できるはずです。
観葉植物
出典:dulton.jp
部屋がなんとなく寂しいと感じたら、アクセントに観葉植物をプラスするのもおすすめです。部屋の中が無機質なテイストで統一されているので、観葉植物のグリーンが良く映えるでしょう。
ただし、雰囲気を損なわないために、飾り方を工夫する必要があります。観葉植物を飾る花器には、以下のデザインを取り入れましょう。
- アイアン
- コンクリート
- モルタル
- スチール
- ガラス
観葉植物を導入してほどよい温もり感をプラスしたい場合、花器には無機質なテイストを入れてください。
スチール・ガラス製の花瓶や壁掛けの一輪挿しなどを採用すれば、無機質なテイストを崩さずに植物が飾れるでしょう。
アイアン製の鉢・プランター・じょうろなども、無機質なテイストによく馴染みます。近年では、コンクリートでできた鉢なども人気です。
無機質な部屋づくりの注意点とよくある質問
最後に、無機質な部屋づくりのよくある質問を紹介していきます。
「なぜ無機質にしすぎてはいけないのか」を把握しておかないと、場合によっては後悔することになるので注意しましょう。
また、「温かみのあるナチュラルテイストの部屋を無機質な雰囲気にするコツ」についても紹介していきます。再現できず悩んでいる人はぜひチェックしてみてください。
Q.無機質な印象にしすぎるのはよくないの?
好みの問題もありますが、無機質なテイストにしすぎてしまうのはおすすめしません。
内装のすべてに無機質さを意識するのではなく、全体のバランスをみることが大切です。
特に、無機質にこだわりすぎて同じ素材ばかり揃えるのは良くないでしょう。
ワンパターンで面白味のない印象や、殺伐として住みづらそうな印象になってしまいます。
その場合は、異素材を組み合わせるなどの変化をつけてみると、スタイリッシュで洗練された印象になるはずです。
また、金属と木材をうまく組み合わせれば、少し温かみのあるちょうどいい無機質感が演出できます。
たとえば内装なら、天井に打ちっぱなしのコンクリート・床に木目が楽しめるフローリングを採用してみるのも1つの手です。フローリングなら足元が冷たくならないので、冬場も快適に過ごせます。
Q.内装や家具がナチュラルテイストだと難しい?
部屋の内装やインテリアがナチュラルテイストだからといって、無機質なテイストが出せないわけではありません。
確かにナチュラルテイストは木や自然の温もりを感じるテイストですが、無機質なものと上手く調和させればクールな雰囲気になります。
特に、インテリアや小物に無機質なテイストを意識するとうまくいくでしょう。
ナチュラルテイストに合わせる場合は、以下のようなインテリアがおすすめです。
- 黒・ブラウンなどの暗めのカラー
- 金属素材(小物がおすすめ)
- シャープなフォルム
床やテーブルは木目調でも、金属製のライトや時計・スチールラックなどを配置することにより、温かみのあるテイストが引き締まります。
また、「男前インテリア」と呼ばれる、無骨でかっこいいデザインのインテリアを多めに採用するのもいいでしょう。クールな印象になるアイテムをプラスしてみてください。
まとめ
無機質な部屋とは、クールで生活感の感じられないテイストの部屋を指します。
再現する際は、人工物やモノトーンを基調にした内装・インテリアをチョイスしてください。
また、生活感をなくす努力も必要です。収納にこだわったり、見せたくないものを隠したりする工夫をおこないましょう。
ただし、無機質な部屋は、夏場は涼しそうでも冬場は寒々しい印象になるのがデメリットです。
そのため、程よい無機質感を目指し、冷たくなりすぎないように配慮することが求められます。
今回の記事を参考に、自身にあった無機質な部屋づくりを検討してみましょう。