本記事では一般的な天井高の平均と、後悔しない理想的な天井の高さについて解説。 天井が高い家のメリット・デメリットや、開放的な空間を作るポイントなども合わせて紹介します。
株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
天井が高い家は、明るく開放的で憧れる方も多いでしょう。近年は、天井の高さを自由に選べます。
「平均的な天井の高さが知りたい!」
「天井高って何?」
という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、一般的な天井高の平均と、後悔しない理想的な天井の高さについて解説。
天井が高い家のメリット・デメリットや、開放的な空間を作るポイントなども合わせて紹介します。
天井の高さは快適に暮らすポイントでもあります。新築やリフォームを考えている方はぜひ最後までご覧ください。
天井高とは
天井高(てんじょうだか)とは、床から天井まで垂直にのびた高さのこと。
日本の建築基準法では、天井高は原則として2100mm以上と定められています。
これは、リビングなど居室だけであり、トイレ・浴室・廊下などは2100mm以下でもかまいません。
勾配天井や一部吹き抜けなどがある場合は、【部屋の容積÷部屋の床面積】で天井高を割り出します。
天井高にこだわれば、より使いやすく過ごしやすい部屋を作れるでしょう。
平均の天井高は2400mm
日本の平均的な天井高は2400mmです。
マンションの平均的な天井高も2400mmが平均となっています。昔は障子やふすまなどの建具が使いやすい高さとして定着したようです。
また、日本で使われる建築資材(合板や石膏ボードなど)の大きさが910mm×2420mmで規格化されていることもあり、天井高を2400mmにすると手間なくコスト削減できるからともいわれています。
部屋別で見る最適な天井高
天井の高さは、居心地の良い使いやすい部屋にするための重要なポイントです。
天井の高さは、室内の開放感・照明効果・温度管理・音響効果などに大きく影響します。
部屋によって利用目的が違い最適な天井の高さも変わるため、部屋別で見る最適な天井高は以下の通りです。
- リビングの天井高:2600〜2800mm
- 寝室・和室の天井高:2200~2400mm
- キッチンの天井高:2300~2400mm
- 水回りの天井高:2200~2400mm
部屋別で見る最適な天井高を詳しく解説します。
リビングの天井高:2600〜2800mm
リビングの最適な天井高は2600〜2800mmです。この高さは、圧迫感を感じさせず適度な開放感を演出します。日本人の平均身長に対しても十分な余裕があり、心理的にも快適だと感じるでしょう。
吹き抜けや勾配天井など高い天井を取り入れたいなら、リビングで叶えるのがオススメです。
人が集まりやすいリビングは、天井が高いほうが明るく開放的な空間となり、ゆとりが生まれます。
ただし、3000mmや4000mmのように天井高が高すぎると、落ち着きのない空間になり空調も効きづらくなるのでバランスを考えましょう。
寝室・和室の天井高:2200~2400mm
しっかり体を休め、落ち着く空間にしたい寝室や和室は、2200〜2400mmの天井高がおすすめです。天井が高すぎる部屋は、心理的に落ち着かなくなります。
やや低めの天井は、寝室や和室に求められる落ち着いた雰囲気を演出し、心理的に安心感を与えリラックスしやすい空間を作り出します。
また、就寝時の体温管理はしっかり体を休めるためにも重要です。比較的低い天井高は、冷暖房効率を高め、体温管理を助けます。
和室において2200〜2400mmは、畳・障子・襖などのサイズとの調和もとりやすい天井高といえるでしょう。
キッチンの天井高:2300~2400mm
キッチンの天井高は2300〜2400mmに設定すると良いでしょう。キッチンはレンジフード(換気扇)や収納(吊戸棚)とのバランスが重要です。
レンジフードは消防法によりコンロから80cm以上離す必要があります。
天井が低すぎるとコンロから80㎝以上離せなかったり、レンジフードが頭に当たってしまったりする場合も。
逆に、キッチンの天井が高すぎると、煙や油がレンジフードまで届かず十分な換気ができなくなる可能性があります。
また、キッチンの収納力を上げたいと、吊戸棚など高い位置に収納を設置したい方も多いでしょう。しかし、高すぎる位置の収納は手が届かず、使いにくいと感じる方が多いようです。
使いやすさ、掃除のしやすさの面からも、キッチンの天井高は2300〜2400mmをおすすめします。
水回りの天井高:2200~2400mm
水回り(浴室・トイレ・洗面所など)の天井高は、2200〜2400mmが良いでしょう。
お風呂やトイレも落ち着いて過ごしたい空間。2200〜2400mmと低めの天井高なら落ち着いてすごせます。
水回りは、洗剤やトイレットペーパーなど毎日の生活に欠かせないアイテムが多いのも特徴です。水回りの天井が高いと、収納の位置が上がり使いづらいと感じるでしょう。
また、天井が高すぎると結露が生じやすくなる可能性があります。
2200〜2400mmなら、換気が効率的に行え、手の届きやすい高さのため、天井の掃除がしやすく衛生的です。
天井を高くするメリット
天井を高くすると得られるメリットは主に以下の3つです。
・開放感を感じる
・光を取り入れられる
・収納スペースを確保できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
開放感を感じる
広々と開放的な空間は、誰もが憧れるのではないでしょうか。天井を高くする最大のメリットは、開放感を感じられることです。
視野が広がり視界に入る壁の面積も広くなるため、余白が生まれ開放感がアップするのです。
大きな家具や観葉植物を取り入れても圧迫感を感じにくく、さまざまなレイアウトが可能となるでしょう。
光を採り入れられる
天井が高いと自然光を多く取り入れられます。天井を高くすると窓の位置も上がり、効率的に光を採り入れられるのです。
自然光がシンプルな空間でも心地よい部屋を演出し、さらに開放感を生むでしょう。
また、日中光が入りやすいと照明の使用が減り、電気代を節約できるメリットもあります。
収納スペースを確保できる
天井が高い部屋は、壁の面積も広いです。そのため、天井が低い家よりも多くの収納スペースを確保できます。
造作できる壁面収納の容量も大きいので、壁一面に収納棚を設置すればインテリアも楽しめるでしょう。特に本が多い方は天井が高い部屋がおすすめです。
天井が高いデメリット
天井が高い部屋は開放感を感じ魅力的ですが、デメリットもあります。
・照明の明るさが必要
・空調が効きにくい
・建築コストが高くなる
・照明やエアコンの掃除が大変
詳しく見ていきましょう。
照明の明るさが必要
天井の高い部屋は、自然の光が入ってきて明るくなりますが、日が沈むと照明が必要です。
天井が高い分、広い範囲を明るくする必要があり、より強力な照明器具や多くの照明が必要になります。
高性能な照明器具は一般的に価格が高く、設置費用がかかることもあるでしょう。また、電球の交換が難しくメンテナンスが大変です。
空調が効きにくい
天井の高い部屋は、冷暖房を使用しても範囲が広くなるため空調が効きにくくなります。
天井が高くても気密断熱性が高い家であれば、光熱費はさほど影響を受けません。
しかし、温かい空気は上に、冷たい空気は下に行く性質をもっています。天井が高い部屋ほど冬は足元が寒く感じ、乾燥しやすいので注意が必要です。
さらに、大きいガラス窓を設置すると熱損失が大きく、さらに暑さ寒さを感じるケースもあるでしょう。
建築コストが高くなる
天井を高くすると、建築コストが高くなります。壁や柱の高さが増すため、より多くの建築資材が必要になるためです。
また、高い窓や扉など、非標準的なサイズの建具が必要になり、コストがさらに高くなるでしょう。
窓の大きさによっては、オーダーメイドのカーテンやブラインドなどの追加購入が必要になります。
照明やエアコンの掃除が大変
天井が高いと、照明やエアコンのお手入れが難しくなります。
脚立で届く範囲はなんとか自分でできますが、それ以上に高い場所は専門業者に頼まないといけません。このため、日常のメンテナンスが面倒で費用がかかる可能性があります。
天井が高くなくても開放的な部屋を作るには
天井が高い家は開放的でおしゃれですが、建築コストがかかるなどデメリットもあります。天井が高くなくても開放的な部屋を作るポイントは主に以下の3つです。
・吹き抜けや勾配天井を取り入れる
・天井や壁の色を明るくする
・背の低い家具を取り入れる
天井が高くなくても、開放的な理想の部屋を作るためのアイデアを紹介します。
吹き抜けや勾配天井を取り入れる
天井が高くなくても吹き抜けや勾配天井を取り入れれば、縦に広がる空間が生まれ開放的な部屋になります。
吹き抜けとは、1階部分の天井や2階部分の床を抜いた空間のことです。
吹き抜けにすれば、リビングと2階をつなぐ空間が生まれます。上下階の音や気配が伝わるので、家族とコミュニケーションがとりやすいメリットが。しかし、2階部分の床面積が狭くなるデメリットもあります。
天井に傾斜をつけてななめにさせた勾配天井は、近年人気のある天井の形です。天井の位置が高くなるため梁が見える場合が多く「梁見せ天井」とも呼ばれます。
勾配天井はデッドスペースを利用するので、吹き抜けのように上の階の床面積を圧迫せず開放感を得られるでしょう。
しかし、照明の交換や掃除など自分で行うのは難しく、冷暖房費も多くかかります。吹き抜けや勾配天井のメリット・デメリットを理解した上で導入を検討しましょう。
天井や壁の色を明るくする
天井や壁の色を明るくすると、実際より部屋を広く見せられます。明るい色は光を反射するため、部屋をより広く見せられるのです。
床・壁・天井と上に行くほど明るくすれば、自然な光が広がるように感じられ、部屋全体が実際より広々と見えるでしょう。
逆に、黒や紺など暗い色の壁は部屋が狭く感じてしまいます。しかし、暗い色は高級感や洗練された印象を与え、モダンやクラシックなインテリアデザインによく用いられます。
背の低い家具を取り入れる
背の低い家具は視線を遮らないため、空間が広く感じられます。壁の面積が増えるので、天井が高く感じるでしょう。また、背の低い家具は圧迫感を感じにくく、開放的な部屋になります。
しかし、背の低い家具では収納力が不足することも。
部屋の用途やライフスタイルに合わせて、適切な高さの家具を選びましょう。
天井高にこだわって後悔しない快適な空間を
天井の高さは、住空間の快適性や機能性に大きく関わる重要な要素です。
日本の平均的な天井高は2400mmとなっていますが、部屋別で見た最適な天井高は以下の通りです。
【おすすめの天井高】
・リビングの天井高:2600〜2800mm
・寝室・和室の天井高:2200~2400mm
・キッチンの天井高:2300~2400mm
・水回りの天井高:2200~2400mm
天井を高くするメリット・デメリットを理解し、天井高を検討しましょう。
【天井を高くするメリット】
・開放感を感じる
・光を取り入れられる
・収納スペースを確保できる
【天井を高くするデメリット】
・照明の明るさが必要
・空調が効きにくい
・建築コストが高くなる
・照明やエアコンの掃除が大変
注文住宅だけでなく、リフォームやリノベーションによって部屋の天井高を上げられます。
吹き抜けや勾配天井を取り入れれば、住まいの魅力を高めつつ、適切な設計と材料選択によってコストの増加を最小限に抑えることも可能です。
ユニテは、経験豊富な専門家があなたの理想の住空間作りをサポートします。
ぜひお気軽にご相談ください。