
マンションの購入後に最も避けたい出費が建て替え費用。区分所有者は必ず負担する必要があります。ここでは建て替えに備えるため、平均的な負担額と決定時の対策を解説します。
目次
「マンションの建て替えが決まった。どうすればいいんだろう?」
「マンションの一室を購入したいけど、建て替えの負担費用が怖い」
など、マンションの建て替えについてお悩みの方は多いでしょう。
マンションの建て替えが決まったら、一般的に区分所有者が費用を負担しなければいけません。
そのため、建て替えが決まった際の対策や、マンション購入前に気をつけるべきポイントを知っておくことが重要です。
本記事では、以下について説明します。
- マンション建て替え、累計件数
- マンションの建て替えが行われるケース
- 住民が負担する費用
- マンションの建て替えが決まったときにできること
- マンションを購入する前に確認すべきポイント
現在居住中もしくは購入を検討しているマンションの建て替えに不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
マンションの建て替え、実は少ない

マンション建て替え費用は、予期せぬ出費のひとつ。そのため、心配される方も多いでしょう。
2002年にマンション建替円滑化法が制定されて以降、老朽化したマンションの建て替えが促されてきました。そのため、一定の築年数が経過している、もしくは自然災害などでダメージを受けたマンションは建て替えが必要になる可能性が高いです。
ですが、マンションが建て替えられる可能性は低く、2024年4月1日時点での建て替え件数は累計297件(約24,000戸)です。(参考:国土交通省「マンション建替えの実施状況」)
それでも建て替え件数が少ない背景には、実現のハードルが高いためです。
マンションの建て替えが難しい理由
マンションの建て替えが難しい理由には、主に以下の3つが挙げられます。
- 住民の同意獲得が難しい
- 法律上、建て替えが許可されない場合がある
- 負担額が大きい
【理由1】住民の同意獲得が難しい

マンションを建て替える際、マンションの区分所有者、つまり各部屋の持ち主の同意を得る必要があります。建て替えに必要な同意数は5分の4以上です。(参考:法令検索「建物の区分所有等に関する法律 建替え決議 第六十二条」 )
大半の区分所有者の同意を得る必要があるものの、建て替え費用を負担してまで賛成する区分所有者は少ないでしょう。そのため、建て替えを実行できないケースがあります。
【理由2】法律上、建て替えが許可されない

既存のマンションのなかには、既存不適格建築物に当てはまるものがあります。
既存不適格建築物とは、現行の法律基準にのっとっていない建築物のこと。建て替えをする際は、現在とは違う形状、もしくは小さな面積で再建築しなければいけません。
そのため、以下のような懸念点が生じ、建て替えを断念するケースがあります。
- 建て替え費用が予算を超える
- 現在と同じ部屋数・部屋面積が確保されるとは限らない
- 区分所有の希望者が減る可能性があり、採算が取れない
【理由3】負担額が大きい

マンションを建て替える際、複数の費用がかかってくるため、総額は膨大になります。
具体的な費用は、以下の通りです。
- 調査設計計画費用
- 事務費用
- 解体費用と建築費用
さらに人件費の高騰や建材費の価格の不安定さが絡んでくるため、購入時に予定していた予算を超える可能性も避けられません。
マンションで生活をしている場合は、仮住まいや家具運搬にかかる費用も考慮する必要があります。
高額な負担額を避けるために、建て替えを諦める可能性も少なくありません。
マンションの建て替えが行われるケース
ハードルが高い中、マンションの建て替えが行われるケースには以下の2通りがあります。
- マンションの容積率にゆとりがある
- マンションが震災被害に遭った
【ケース1】マンションの容積率にゆとりがある

建築物を建てる際には容積率が定められており、各建物の床面積の合計(延床面積)と敷地面積の比率を一定内に収める必要があります。
既存の建物の容積率に余裕がある場合は、建て替え時に部屋数を増やすことで収入を増やし、建て替えにかかる費用をカバーできます。
そのため、区分所有者の自己負担額が減る可能性があり、建て替えを実行しやすくなります。
【ケース2】マンションが震災被害に遭った

マンションが震災被害に遭いダメージを追った場合も、建て替えが行われる可能性があります。
震災被害にあった際、マンションは以下の援助を受けられます。
- 自治体による補助金
- 地震保険による保険金
震災後は、マンションのダメージが大きく生活が難しくなる可能性や、見た目に異常がなくとも内部にダメージが入り耐震性が下がっている可能性があります。
そのため、住民の生活や安全を考慮し、上記の援助を受けて負担額を抑えながら建て替えを積極的に行う必要が出てきます。
なお、補助金の有無や額は自治体によって異なるため、確実に支援を受けられるとは限りません。コストカットのために地震保険に入っていない、もしくは解約しているマンションもあるため、注意が必要です。
マンションの建て替え、負担額とよくある疑問
マンションの建て替えにおける区分所有者の負担額は、約2000万円といわれています。
購入費との総額を考えると、一般的に戸建ての家を購入するほうが出費は少ないです。
マンションの建て替え負担額について、疑問点をお持ちの方もいるかもしれません。
ここでは、よくある3つの質問に回答します。
- 修繕積立金は使える?
- 建て替え負担が免除されるケースはある?
- 立退料はもらえる?
【よくある質問1】修繕積立金は使える?

修繕積立金は、マンションの建て替え時には使用できません。
修繕積立金とは、マンションの共用部分を区分所有者全員で維持管理するために設定された費用のこと。共用部分の修繕などに使用できます。(参考:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」)
つまり、修繕積立金は共用部分における維持管理のみが対象。マンション全体を新しい状態に変える建て替えには、活用できません。
【よくある質問2】建て替え負担が免除されるケースはある?

建て替え費用が免除されるケースは、一般的にはありません。
本記事の「マンションの建て替えが行われるケース」で紹介したように、容積率にゆとりがある場合や震災被害に遭った場合に限り、負担額が軽減される可能性はあります。
しかし全額免除になるケースはあまりなく、建て替えが決まった場合は、費用を負担して再建築後に再び入居するか、売却する必要があるでしょう。
【よくある質問3】立退料はもらえる?

マンションの建て替え時、立退料はもらえません。
そもそも立退料は、部屋を貸している人が借りている人に立ち退いてもらう際に支払う費用を指します。
一方でマンションの建て替え費用を負担する区分所有者は、マンションの一区画を購入した人です。基本的に、建て替えを理由にマンションの購入分を手放したとしても、区分所有者が立退料支払いの対象になることはありません。
マンションを手放す際には、売却が一般的。しかし、戻ってくる額は購入時よりも少ないことが多いです。資産としてマンションの一区画を購入したい方や損を抑えたい方は、購入時に建て替えの可能性を調べておく必要があります。
マンションの建て替えが確定したとき、できること
マンションの建て替えが確定したとき、できることは2つあります。
- マンションの建て替え費用を支払う
- マンションを売却する
【できること1】マンションの建て替え費用を支払う

マンションの建て替えが確定すれば、決議に賛成していても反対していても、費用を負担する必要があります。そのため、マンションの所有を続けたい場合は、建て替え費用を支払いましょう。
しかし建て替え後は、今と同じ部屋面積や間取りになるとは言い切れません。マンションに住んでいる人は既存の部屋よりも不便さを感じる可能性があります。分譲マンションを賃貸として貸し出している人は、契約希望者が減るかもしれません。
そのため、せっかく建て替え費用を負担しても、理想とは異なる結果になる場合があります。建て替え後に再入居もしくは賃貸として使用する場合は、事前に建て替え後の共用部分や各部屋の間取りに、どのような変更があるかを確認しておきましょう。
【できること2】マンションを売却する

マンションの建て替え後の使い勝手やデザインが負担額に見合わないと思った場合、もしくは負担額が用意できない場合は、マンションを売却することができます。
売却をする場合は、建て替え費用を支払う義務が免除されます。売却時に受け取った金額を元手に新たな住まいを探すことができます。
しかし、建て替えを控えるマンションの売却費は、低額になりやすいです。そのため、希望する査定額に届かない可能性は避けられません。
後悔する前に!マンションを購入前に確認すべきポイント
基本的に、マンションの建て替えが行われるケースは稀です。慎重になりすぎる必要はありませんが、将来的な予算が心配な方は、建て替えの話が持ち出されそうなマンションを見極め、購入を避けることが無難でしょう。
マンションの購入時は、以下の3点を確認してください。
- 修繕履歴と修繕計画
- 建て替え計画の有無
- 耐震性
- ハザードマップ
【ポイント1】修繕履歴と修繕計画

マンションのメンテナンス状況は、寿命に大きく影響します。定期的なメンテナンスが行われていれば老朽化が抑えられ、建て替えが行われる可能性が低くなります。
そのため、中古マンションを購入する際は、修繕履歴と今後の修繕計画を調べるようにしましょう。これらは購入希望者にも公開可能な資料です。確認したい場合は、不動産仲介会社にお願いし、マンション管理会社から資料を提供してもらいましょう。
【ポイント2】建て替え計画の有無

購入前に、すでにマンションの建て替えが決まっていることがあります。この場合、マンションの建て替えを実行する旨が、重要事項説明書に記載されています。
重要事項説明書は、マンション売買をする際にすべて購入者に説明することが義務付けられている資料です。そのため、資料請求をせずとも知ることができますが、見落としてしまう可能性もあります。
重要事項説明書は、購入者が目を通すだけではなく、宅地建物取引士による説明が義務付けられています。宅地建物取引士に建て替えについて不安がある旨を伝えておくと安心でしょう。
【ポイント3】耐震性

マンションの耐震性が低い場合、震災時にダメージが入り、建て替えとなる場合があります。マンションの耐震性に関する情報は、重要事項説明書で確認することができます。
一般的に、1981年6月1日以降の建築物は新耐性基準に沿って建てられているため、震度6強~7程度の揺れでも倒壊や崩壊はないと考えられています。そのため、1981年以降に建てられたマンションは、比較的安全と考えていいでしょう。
しかし、1981年6月1日以降に建てられたマンションは、新耐性基準で定められている基準をクリアしていない可能性があります。この場合、耐震診断の結果が重要事項説明書に記載されているので、見落とさないように注意が必要です。
【ポイント4】ハザードマップ

震災発生時のマンションへのダメージに影響する要素として、建築物の耐震性に加え基盤の強さが挙げられます。
基盤が弱いと、震災時にマンションがダメージを受ける可能性が高くなります。そのためハザードマップで購入を検討しているマンションの基盤の強弱を確認しておくようにしましょう。
長期的に安心して快適に住める家を探そう

マンションの建て替えが行われるケースは少ないですが、それでも予想外の出費は避けたいもの。建て替えに反対したとしても、ほかの区分所有者の意向で実行されてしまうこともあります。つまり、建て替えをするか否かは個人の意向で決められるものではありません。
購入時や維持管理にかかる費用だけで抑えたい場合は、戸建て住宅がおすすめ。リフォームの内容、時期や予算を自分で決められるためです。
富山県で中古物件のリフォームをお考えなら、ユニテにご相談ください
ユニテはご高齢の方がお住まいの家や二世帯住宅への改修など、中古物件のリフォーム実績が多くあります。
自分好みの家に住みたい方や長期的に安心して快適に住める家をお探しの方は、中古物件を購入してリフォーム・リノベーションすることも、おすすめです。
施工後のイメージが予算が気になる方は、まずご相談ください。
まとめ
今回は、マンションの建て替え費用に不安を抱えている方に向けて、以下の5点をお伝えしました。
- マンション建て替え、累計件数
- マンションの建て替えが行われるケース
- 住民が負担する費用
- マンションの建て替えが決まったときにできること
- マンションを購入する前に確認すべきポイント
予定外の出費を避け、後悔なく物件購入をする際の参考にしてください。