
上がり框とは、玄関の土間部分と廊下の境目にある材木のことです。ほとんど目につかないパーツですが、デザインや高さによって玄関の使いやすさや安全性が大きく変わります。上がり框の種類と特徴を知って、理想の住まいを実現しましょう。

株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
「上がり框っていう言葉をよく聞くけど、どういう意味?」
「上がり框って、そんなに重要なの?」
など、上がり框の意味や役割を知らない方も多いでしょう。
上がり框とは、玄関の土間部分と廊下の境目に置かれた化粧材のこと。
玄関スペースの一部分に過ぎないように見えるため、普段はあまり注目しないかもしれません。
しかし上がり框の高さやデザインによって、玄関の安全性や利便性は左右されます。
本記事では、上がり框の特性を理解するために、以下について解説します。
- 上がり框とは
- 上がり框の高さによるメリット・デメリット
- 上がり框で使われる素材と特徴
- 上がり框の形状と特徴
- 生活の利便性を上げる上がり框の施工事例
- 上がり框による転倒が不安なときの解決策
上がり框とは

上がり框とは、玄関や土間から廊下に上がる段差の側面に張り付けられた横木を指します。
おもに内と外の空間を視覚的に分けると同時に、デザインによってはオシャレ感や転倒防止の役割も果たしています。
上がり框の高さの目安
上がり框の高さは建物によって異なります。
一般的に安全とされている上がり框の高さは、以下の通りです。
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高い上がり框のメリットとは
高い上がり框のメリットは、次の3つです。
- 砂ぼこりが室内に入りづらい
- 靴を履く際に廊下に腰かけられる
- 段差がどこにあるか分かりやすい
砂ぼこりが室内に入りづらい
靴裏についた土や泥をしっかりと落としてから玄関に入っても、やはり多少の砂ぼこりは玄関に溜まってしまうもの。
玄関に高窓がある場合は、特に春は花粉黄砂が玄関に入りこんでしまうこともあるでしょう。
上がり框が高い場合は、そうした砂ぼこりが廊下に上がってきづらくなります。
内と外の空間をしっかりと分け、室内を清潔に保ちたい方は、高めの上がり框がおすすめです。
靴を履く際に廊下に腰かけられる
上がり框が高いと、廊下と土間のあいだに高低差が生まれるため、靴を履く際に廊下に腰かけることができます。
ブーツやハイカットスニーカーを着脱する際に便利です。
また、小さなお子さんやご高齢の方にとっても、うれしいでしょう。
段差がどこにあるか分かりやすい
上がり框が高い分、高低差が明白になります。
土間と廊下が同系色でまとめられているうえ、高低差がないとつまずくリスクがあります。
そのため、高い上がり框のほうが段差がどこにあるか分かりやすく、転倒防止につながります。
高い上がり框のデメリットとは
高い上がり框のデメリットは、次の2つです。
- 足を上げる必要がある
- 天井までの高さが短くなる
足を上げる必要がある
上がり框が高いと、廊下にあがる際にしっかりと足をあげる必要があります。
足腰を痛めている方や、ご高齢の方にとっては、負担になるかもしれません。
上がり框と土間のあいだに、足の踏み場を作るか階段を設置するなどの対策をしておくことをおすすめします。
天井が低く感じる
上がり框が高いということは、廊下を含む居住スペース全体が底上げされることになります。
そのため、床から天井までの高さが短くなります。
高い天井で広々とした空間を演出したい方や、天井が低く圧迫感のある方は、低い上がり框のほうがいいでしょう。
低い上がり框のメリットとは
低い上がり框のメリットは、次の3つです。
- バリアフリーとしての役割を果たす
- 自動掃除機で掃除が可能
- 転倒のリスクが下がる
バリアフリーとしての役割を果たす
特に上がり框の高さが1cmにも満たない場合、車いすで玄関から廊下にスムーズに上がることができます。
また、ご高齢の方や小さなお子さんにとっても、出入りがとても楽になります。
自動掃除機で掃除が可能
自動掃除機型ロボットは、高低差のある場所は移動できません。
そのため、基本的な掃除はロボットに任せておきたいという方や家事に時間を割けない方は、低い上がり框をおすすめします。
転倒のリスクが下がる
上がり框が低い分出入りが楽になり、つまずいて転ぶといったリスクが下がります。
また、廊下から外に出る際も、高低差があると、そのまま前のめりになって頭から落ちてしまうかもしれません。
ご高齢の方や小さなお子さんがいる場合は、段差や手すりをつけるか、低い上がり框にすることをおすすめします。
低い上がり框のデメリットとは
低い上がり框のデメリットは、次の2つです。
- 砂ぼこりが室内に入りやすい
- 室温が外気に影響されやすい
砂ぼこりが室内に入りやすい
上がり框が低いと、靴の裏についた砂ぼこりや、玄関ドアの開閉と共に入ってきた外部のゴミが、廊下に入りやすくなります。
廊下に流れてきたゴミは、そのまま衣服や足裏に付着してリビングやダイニングにも入ってきてしまいます。こまめな掃除を心掛けるようにしましょう。
室温が外気に影響されやすい
上がり框が高いと、玄関や床から伝わってきた外気の温度が、室内に入りにくくなります。
一方で上がり框が低いと、ストッパーとなるものがなく、外気が直接室内に入り込んでしまいます。
特に冬場は、室温が下がると入浴時のヒートショックの危険性が高まるため、上がり框以外の部分で断熱性を高める工夫が必要になります。
上がり框に使える3つの素材とは

一概に上がり框といっても、使用する素材はさまざまです。
基本的には、廊下もしくは土間のどちらかで使用されている素材に合ったものを用います。
ここでは、上がり框によく用いられる3つの素材を紹介します。
- 木材
- 石材
- タイル
木材
木材は、3つの素材のなかでもっとも使用頻度が高くオーソドックスです。
廊下の床板のデザインと合った色合いや木目を持つ木材を選ぶことが一般的。
やさしく温かみのある空間を演出します。
石材
大理石もしくは御影石を用いることが一般的。
土間の床材と合わせた模様や風味の石材を用います。
見た目にツヤがあって高級感が生まれるうえ、耐久性にも優れています。
タイル
豊富な模様や色から、好きなデザインを選べます。
そのため、デザイン性にこだわりたい方や、オシャレで個性的な玄関を作りたい方におすすめ。
玄関全体の雰囲気と合ったタイルを探してみてください。
上がり框の4つの形状
上がり框は、主に4つの形状に分けられます。
形状によって、機能や雰囲気が変わるため、理想の玄関・土間空間に合ったデザインを検討してみてください。
- 直線
- L字
- 斜線
- 変形
直線

多くの住宅で取り入れられている、もっとも一般的な形状が直線です。
どんな雰囲気の住宅とも相性がよく、直線状で廊下と玄関の境目を区切ることで、落ち着いた雰囲気を演出します。
シンプルなデザインのため、狭い玄関でも取り入れやすいです。
L字

上がり框をL字型にすることで、2方向からの出入りが可能になります。
片方は普通の玄関として使用し、もう片方は階段やスロープをつけてバリアフリーな玄関にしたい方におすすめ。
シューズクローゼットがある場合は、片方を廊下に、もう片方はシューズボックスに連結させることも可能です。
利便性が高い一方で、玄関と廊下のスペースが十分にあることが条件となります。
斜線

玄関に対して斜めに設置された上がり框は、空間を広く見せるために有効です。
スタイリッシュでしまりのあるデザインになることが特徴。
斜めに設置することで、上がり框の幅が広くなります。そのため、大人数での靴の脱ぎ履きがしやすくなります。
変形

円形やアール型など、遊び心のあるデザインです。
玄関スペースが広く、かつオシャレで個性的な玄関にしたい方におすすめ。
素材を曲線上に加工する必要があるため、施工費が比較的高額になる点には注意が必要です。
機能面抜群!上がり框の施工事例
上がり框の素材や形状について知っても、具体的な雰囲気は想像しづらいかもしれません。
ここでは、上がり框の3つの施工事例を紹介します。
- 車いすでも利用できる、変形型デザイン
- ご高齢の方でも楽チン、二段構成のデザイン
- お出かけが楽しくなる、広々とした直線型デザイン
リノベーションやリフォームを考える際の、参考にしてみてください。
車いすでも利用できる、変形型デザイン

家全体を、車いすでも移動しやすい広々とした開放感のあるデザインにリノベーションした、こちらの住宅。
玄関も広く上がり框の高低差がさほどないため、スロープなしでも十分に移動可能です。
やや高低差をつけることで、外の砂ぼこりなどが入ってこないことも特徴。
廊下と合わせたダークブラウン色の上がり框を採用することで、内と外の境界線が分かりやすく、メリハリのあるデザインとなっています。
ご高齢の方でも楽チン、二段構成のデザイン

もともとはタイル地の玄関に、高い上がり框がついていたお宅。
上がり框の手前に式台を設置することで、足を上げる負担が減り、ご高齢の方や小さなお子さんにも負担のかからない設計に変わりました。
式台の部分には奥行きもあるため、ゆっくりと上り下りすることも可能。
ややアイボリーがかった白の土間と暖かい色合いの木材の上がり框の相性も良く、やさしく落ち着いた雰囲気を演出しています。
お出かけが楽しくなる、広々とした直線型デザイン

しっかりと横幅のあるこちらの玄関には、直線型の上がり框を採用しました。
ご家族が横に並んで靴を脱ぎ履きできることはもちろんですが、上がり框と玄関のあいだに式台を設けることで、出入りの際に足腰にかかる負担を軽減させました。
上がり框の向かい側には椅子を用意。ほかの家族の支度を待っているあいだ、先に靴を履いて座りながらのんびりと待つことができます。
上がり框の段差・転倒が不安なときの解決策とは
上がり框のリノベーションを考える際に、段差による転倒を心配される方は多いでしょう。
上がり框の高さそのものを低くすることは可能ですが、廊下を含む居住スペース全体の床の高さも下げる必要があります。そのため、大がかりな施工が必要となります。
今の上がり框の高さのままで、転倒のリスクやそれに伴うケガのリスクを下げたい場合は、次のような対策をすることが可能です。
- クッションを付ける
- 木材の上がり框を選ぶ
- マットを敷く
- 手すりを設置する
- 式台を設置する
クッションを付ける

まず簡単にできる防止策として、上がり框の角の部分にクッション性のシールを設置することが挙げられます。
スポンジのように弾力のあるシールがホームセンターなどで販売しているので、ぜひ活用してみてください。
転倒そのもののリスクを抑えるのは難しいですが、上がり框にひざや足の甲が当たった際、ぶつかった箇所へのダメージを抑えることができます。
木材の上がり框を選ぶ

木材は、石材やタイルの上がり框に比べると、やや柔らかみがあります。
また、木本来の形を活かして作られた、丸みのある上がり框も選べます。
そのため、転倒そのもののリスクを抑えることはむずかしいですが、上がり框にぶつかった箇所へのダメージを抑えることができます。
マットを敷く

玄関マットのなかでも、クッション性の高いマットを選ぶようにしましょう。
ホームセンターや家具店などで販売されています。
玄関から廊下に上がる際に転んだとき、マットが衝撃を吸収してくれます。
そのため、ケガや骨折のリスクや程度を抑えてくれるかもしれません。
手すりを設置する

手すりを設置することで、玄関と廊下の上り下りがしやすくなり、つまずいた際も転倒するリスクが下がります。
ホームセンターなどで簡単に取り付けられる手すりが購入できます。予算を抑えたい方は、市販の手すりや工具を購入してみてください。
しっかりとした強度が欲しい方やご家族の身長にあった場所に手すりを設置したい方は、リフォーム会社への相談をおすすめします。
式台を設置する

式台とは、土間と上がり框のあいだに設置される板のこと。階段のような役割を果たし、上がり框が高いときに、上り下りの負担を軽減するために設置できます。
ご自身でDIYをしたい場合は、式台の代わりになりそうな平らな石を設置する、もしくは板材を置くといった工夫を取り入れられます。
しかし、素材によっては割れてしまったりすべってしまうリスクもあります。
確実に安全かつ利便性の高い式台にしたい場合は、リフォーム会社に相談することをおすすめします。
富山県で上がり框のリフォームをお考えなら、ユニテにご相談ください!
ユニテは一級建築士も在籍する、実績豊富なリフォーム会社です。
シンプルで落ち着いた雰囲気から、お住まいの方の趣味嗜好に合わせたデザインまで、柔軟にご希望にお応えします。
また古い家屋やご高齢の方からの相談実績も豊富。
ユニバーサルデザインも取り入れた玄関をご希望の方は、ぜひユニテにご相談ください。
まとめ
上がり框について、以下の6点をお伝えしました。
- 上がり框とは
- 上がり框の高さによるメリット・デメリット
- 上がり框で使われる素材と特徴
- 上がり框の形状と特徴
- 生活の利便性を上げる上がり框の施工事例
- 上がり框による転倒が不安なときの解決策
上がり框の素材やデザインを工夫するだけで、衛生面・利便性・安全性が大きく変わってきます。
お好みのデザインの玄関にするだけでなく、家族全員が暮らしやすいと思える玄関を作れるよう、参考にしてください。