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株式会社ユニテ 設計部
設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。
【 保有資格 】
一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士
地震が多い日本。2024年1月には能登半島地震では、最大震度7を観測し、富山県でも約18,000棟の住宅が被害を受けました。
耐震対策をしようと思っていても、「うちは耐震診断が必要?」「費用はどのくらい?」「今すぐできる対策は?」など、疑問や不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、耐震診断の必要性から、家具の固定といった手軽にできる対策、さらに費用を抑えながら効果的に進める耐震改修まで、家族の安全を守るために知っておきたい耐震対策の基礎知識をわかりやすく解説します。
耐震対策とは
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耐震とは、地震が起きたときに建物が揺れに負けない力をもっていることをいいます。
耐震対策とは、地震が来ても建物が倒れないようにし、人の命と建物の安全を確保するための対策です。
耐震対策を行えば、地震が起きても建物がすぐには倒壊せず、中にいる家族が避難するための大切な時間を確保できます。
地震発生時、耐震対策をしているかどうかは、生死を分ける重要な備えとなるのです。
すぐできる耐震対策
大がかりな工事をしなくても、以下のようにすぐできる耐震対策があります。
- 生活空間の家具を減らす
- 家具のレイアウトを工夫する
- 窓ガラスを対策する
- 家具や家電を固定する
家族の安全のために、まずはすぐできる耐震対策を始めてみましょう。
生活空間の家具を減らす
震度5以上になると家具は地震の揺れで動き、バランスを崩して転倒する危険があります。家具の転倒から身を守るには、毎日使う生活スペースの家具を少なくすることが最も有効です。
- 居住スペースと収納スペースをわける
- 使っていない家具を処分する
- 重いものを下に収納し、重心を低くする
家具のレイアウトを工夫する
地震が起きたとき、ベッドの上に倒れそうな家具はありませんか?家具のレイアウトを工夫しましょう。倒れた家具などにより、ドアが開かなくなる・つまずいてケガをする・避難の妨げになる可能性があるからです。
ベッドなど設置する向きを工夫し、避難経路となる通路や出入口周辺には動きやすい家具を置かないようにしましょう。
- テレビや花瓶などを高いところに置かない
- 寝る場所・座る場所にはなるべく家具を置かない
- なるべくものを置かない安全スペースを作っておく
- 背の低い家具にする
窓ガラスを対策する
地震で窓ガラスが割れてしまうと、ケガをしたり避難の妨げにもなります。窓ガラスにも耐震対策を行いましょう。
窓ガラスの飛散防止フィルムを貼ると、地震だけでなく台風などの災害対策にもなります。
- 飛散防止フィルムを貼る
- 窓の近くに物を置かない
- 就寝時はカーテンを閉める
- 割れても飛散しにくいガラスにリフォームする
家具や家電を固定する
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まずは生活スペースの家具を必要最小限に減らし、配置を工夫したうえで、残した家具や家電はしっかり固定しましょう。
家具を固定する方法は、主に以下の5つがあります。
- L型金具
- ポール式器具
- ベルト式器具
- ストッパー式・マット式器具
家具を固定する器具は、100円ショップなどで手軽に手に入るものもあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
L型金具
L字金具は、転倒防止器具の中でも最も効果が高いとされています。とくにL型金具を下向きに固定する方法が効果的です。
L型金具は、金属製で丈夫な作りで、2,000円ほどでホームセンターなどで購入できます。家具と壁をL字型(直角)の形をした金具で固定して使用します。家具や壁に穴が空いてしまいますが、ビスやボルトで固定するため、確実な固定が可能です。
確実な転倒防止には、1台の家具に対して両端に同じ種類の器具を2個以上取りつけることが推奨されています。L字金具を取りつけるには、壁や家具の強度も必要です。壁の材質に合った固定具を選びましょう。
ポール式器具
ポール式器具は、天井と家具の間につっぱり棒のようにつっぱって固定します。ネジで壁や家具を傷つける必要がなく、賃貸でも使用可能なため、手軽にできる耐震対策です。
背の高い家具や、冷蔵庫などの転倒防止に用いましょう。
ポール式器具を取りつける際は、家具と天井の強度を確認し、2本以上で固定するのがおすすめです。
ベルト式器具
ベルトで家具や家電を固定するのがベルト式器具です。ビスや粘着パットなどで固定します。
ベルト式器具の耐震効果は、ポール式器具より高いです。
家具にベルト式器具を取りつけるときは、壁にできるだけ近い位置に設置するとしっかりと固定できます。
ストッパー式・マット式器具
ストッパー式器具やマット式器具は、家具や家電の底に挟んで使用する耐震対策グッズです。
ストッパー式器具は、少し傾斜がついた家具などにはさむことでうしろに倒した状態にします。マット式器具は粘着性のあるマットを底に貼り、衝撃を吸収し家具の転倒を防ぎます。
ストッパー式器具やマット式器具は、価格が安く手軽に購入できるためおすすめです。使用方法は簡単ですが、単独では耐震効果が低いため、ほかの耐震器具と併用して使いましょう。
住宅を耐震補強する方法
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住宅の補強には、主に以下の4つの工法が用いられます。建物ごとの状態や問題点に応じて、これらを組み合わせ、最適な耐震対策を行うことが重要です。
- 壁を増やす
- 接合部を補強する
- 基礎を補修する
- 屋根を軽くする
壁を増やす
壁を増やしたり、バランスよく配置したりして、地震に強い建物にします。
例えば、柱だけでは地震の力に耐えきれませんが、筋交いを入れて耐力壁を追加すれば、建物の強度を高められます。
また、壁や柱がかたよって配置されていると、地震の揺れでねじれが生じ、建物に大きな負担が。壁のないところに耐力壁を設置し、建物全体のバランスを改善させます。
接合部を補強する
地震の揺れによって柱などが外れると建物が倒壊する可能性があります。接合部を金物でしっかりと固定することが重要です。
地震時の揺れで柱が浮き上がるのを防ぐホールダウン金物や、柱と土台を固定するためのL字金物などを、建物の状況に応じて取り入れます。
基礎を補修する
基礎や土台がしっかりしていないと、建物が倒壊する危険性が高くなります。基礎を補強して地震に耐えられる建物にしましょう。
鉄筋が入っていない無筋コンクリート基礎には、樹脂を注入したり、新たに鉄筋コンクリート基礎を抱き合わせて補強します。
屋根を軽くする
屋根の重さは建物全体の耐震性能に影響します。建物の上部が重いと地震の揺れが増幅しやすいためです。
重たい葺土を使用して固定した日本瓦を、軽量瓦・化粧ストレート屋根・金属屋根(トタンやガルバリウム鋼板)などに改修して屋根を軽量化させます。
耐震補強するなら、リフォームも一緒に
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耐震補強をするなら、リフォームも一緒に検討しましょう。耐震対策とリフォームを同時に行えば、時間的にも経済的にも大きなメリットがあります。
解体など重複している工事を一度で済ませられるため、コストと工期を削減できます。また、一度の引っ越しで済むため、生活への影響も最低限ですむでしょう。
耐震補強と内装を一体的に計画でき、間取りの変更も簡単です。
耐震補強とリフォームを一緒に行えば、地震への備えと暮らしやすさの両方を兼ね備えた理想の住まいを同時に手に入れられます。
耐震補強をする前に診断を受けよう
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地震は、いつどこで起こるかわかりません。家の中の耐震対策をしていても、建物自体が耐えられなければ家族の命は守れません。
さらに、あなたの家が倒壊してしまうと、避難や救助、消火活動の妨げになり、ほかの人の暮らしや安全にも影響を与えます。
住宅の耐震対策は、あなたや家族の安全だけでなく、社会全体の防災にも重要な役割を果たすのです。
住宅の耐震対策が必要な家
日本の耐震化率は上昇していますが、調査により導き出した令和2年の推計によると、耐震性不足の建物は約250万戸あるとされています。
耐震対策が必要な家は、主に以下の通りです。
- 旧耐震基準で建てられた家(1981年6月より前に着工された家)
- 地盤が弱い土地に建てられた家
- 複雑な形状の家
- 増築を2回以上行った家
- 1階に柱や壁が少ない家(ビルトインガレージなど)
- 大きな吹抜けがある家
- 老朽化している家(シロアリなど)
- 古い日本瓦などを使用した屋根が重い家
あなたの家は耐震対策が必要なのか「誰でもできるわが家の耐震診断」でチェックしてみましょう。
耐震診断を受けよう
耐震診断とは、建物の地震に対する強さを調べる検査のことです。耐震診断資格者が図面や現地を調査し、耐震性能を数値化して評価します。
耐震診断は、家にとっての『健康診断』です。目に見えない建物の弱点を専門家が見つけ出し、効果的な対策方法を提案します。耐震診断でわかった結果をもとに、適切な耐震補強を行えば、地震に強い安全な住まいが実現するでしょう。
まずは、お住いの市区町村の相談窓口から耐震診断について問い合わせましょう。
耐震診断から耐震改修工事の流れ
耐震診断から耐震改修工事を行う流れは以下の通りです。
1.事前準備:築年数・図面・関連書類を用意する。
2.自治体の補助金制度を確認し、補助金を申請する
3.現地調査:所要時間は、図面がある場合1.5〜2時間程度
4.データを分析:総合的な耐震性能の判定する
5.診断結果の報告:現状の耐震性能の説明する
6.見積もりの作成と調整:耐震補強とリフォーム工事の詳細な見積もりを作成する。予算に応じて工事内容を調整する。
7.耐震改修の補助金を利用する場合、補助金の申請を行う
8.耐震改修工事の実施
9.完了検査と引き渡し:工事完了後、耐震性能が向上したことを確認し引き渡す
現地調査は2時間ほどかかります。屋根裏なども確認するため、通路は片づけておくとよいです。
住宅の耐震対策の費用
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耐震対策を検討するときに、多くの方が心配されるのが費用についてです。耐震診断から補強工事まで、具体的な費用を解説します。
耐震診断の費用
一般的な耐震改修工事の費用
耐震補強の費用も、建物の状態や耐震診断結果によって変わります。
一般財団法人日本建築防災協会「耐震改修工事の目安」によると、一般的な木造住宅の耐震改修工事は100〜150万円未満の工事が最も多いです。全体の半数以上の工事が約140万円以下で行われています。
また、上手に補助金を活用すれば耐震改修の費用を抑えられるでしょう。
補助金・助成金を活用する
多くの自治体で、耐震診断・耐震改修工事の助成制度を設けています。それぞれの自治体が独自の支援制度を設けているため、お住まいの地域によって受けられる補助内容が変わるため注意しましょう。
富山県の耐震診断・耐震改修に対する支援制度をご紹介します。
耐震診断:診断費用の9割(自己負担2,000円~6,000円程度)
耐震改修:工事費の5分の4を補助(100万円まで)
富山県の古い住宅は広く立派なものが多く、建物全体の耐震改修では費用がかさむ傾向があります。
そのため富山県では、より多くの方が耐震対策に取り組めるよう建物の一部分だけの補強や、費用を抑えた工法、また何年かにわけて少しずつ進める耐震改修も補助金の対象です。
お住まいの地域の補助金はこちらからご確認ください。
補助金を利用する注意点
補助金を利用して耐震対策する場合は、以下の点に注意しましょう。
- 助成金の申請には期限がある
- 予算に限りがあるため、早めに申請する
- 耐震診断・耐震改修をする前に助成金の申請をする
各自治体は、耐震対策用の補助金として使える金額を年度ごとに設定しています。補助金制度は年度によって内容が変更される可能性もあるため、必ず自治体に確認しましょう。
また、耐震診断・耐震改修をする前に助成金の申請が必要です。
耐震改修は補助金を申請し承認されてから、正式な工事契約を結び工事を実施しましょう。工事が完了し費用の支払いを済ませたら、完了報告書を提出し耐震審査を受けたのちに補助金が支給されます。
耐震対策で安心して過ごせる住まいに
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耐震対策は家族を守るだけでなく、周囲の人の暮らしも守ることにつながります。
今すぐできる耐震対策を確認しましょう。
- 生活空間の家具を減らす
- 家具のレイアウトを工夫する
- 窓ガラスを対策する
- 家具や家電を固定する
また、以下のような住宅は、耐震対策が必要です。
- 旧耐震基準で建てられた家(1981年6月より前に着工された家)
- 地盤が弱い土地に建てられた家
- 複雑な形状の家
- 増築を2回以上行った家
- 1階に柱や壁が少ない家(ビルトインガレージなど)
- 大きな吹抜けがある家
- 老朽化している家(シロアリなど)
- 古い日本瓦などを使用した屋根が重い家
ご自宅の耐震対策でお困りなら、ユニテへご相談ください。
ユニテは、築100年の古民家をリノベーションした実績や、耐震補強工事に多く携わっております。地域密着型だからこそ、富山県の気候条件や生活様式を反映した提案が可能です。
あなたのご自宅を、より安全な住まいへと生まれ変わらせましょう。