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【完全ガイド】耐震補強は意味がない?方法・費用・助成金まで

地震が多い日本。住まいの安全は最重要課題です。しかし「耐震補強って本当に効果があるの?」という疑問を抱く方も少なくありません。今回は、耐震補強の価値から具体的な方法、そして気になる費や利用可能な助成金制度まで、あらゆる角度から解説します。

監修者
一級建築士/O.Fumihiro
一級建築士
O.Fumihiro

株式会社ユニテ 設計部

設計部門の責任者として年間20棟以上の新築住宅設計を手掛ける。

【 保有資格 】

一級建築士 / 建築施工管理技士一級 / 宅地建物取引士 / 応急危険度判定士

地震が多い日本。住まいの安全は最重要課題です。能登半島地震によって、富山県氷見市で液状化被害が出たこともあり、耐震補強に関心がある方が多いでしょう。

 

しかし「耐震補強って本当に効果があるの?」「何が一番良い方法で、費用がどのくらいかかるかわからない」という疑問を抱く方も少なくありません。

 

今回は、耐震補強の価値から具体的な方法、そして気になる費用や利用可能な助成金制度まで、あらゆる角度から解説します。今すぐチェックして、安心な暮らしへの第一歩を踏み出しましょう。
 

耐震補強しないとどうなる?

耐震補強はあなたの家族の命を守るだけでなく、地域社会の安全にも直結します。
 

耐震補強せずに建物が倒壊すると…
  • 負傷者や死傷者が発生する
  • 倒壊した建物が道を封鎖する
  • 火災のリスクがある
  • 家具や財産がなくなる
  • 住むところがなくなる
  • 建て替えや修繕など高額な費用がかかる
  • 生活再建の遅くなる

 

耐震補強は、建物を強化するだけではありません。あなたと家族の命、財産を守ります。地震が多い日本にとって、耐震補強は未来に対する重要な投資だといえるでしょう。

耐震補強した方がよい家って?

以下の特徴に当てはまる家は、必要に応じた耐震補強を強くおすすめします。

  • 1981(昭和56)年6月より前に建てられた家
  • 過去に地震を経験した家
  • 木造で壁が少ない家
  • 窓が多い家
  • 大きな吹抜けがある家
  • コンクリートの基礎がない家
  • 重い瓦屋根の家
  • 軟弱な地盤や埋め立て地に建つ家
  • 地震ハザードマップで危険度が高い地域の家文章はここに入れる

 

約40年前の1981年6月1日よりあとに建てられた家は「新耐震基準」に基づいて建設されています。「震度6強から7の地震で損傷せず倒壊・崩壊しない」という基準で建てられているので、耐震性が高いです。2000年には、さらに耐震基準が引き上げられています。

 

特に、昭和56年より前に建てられた日本家屋に住んでいる方は、耐震補強を検討しましょう。
 

耐震補強の方法

耐震補強工事には以下の種類があります。

 

耐震:建物の強度を強めて地震に備える。揺れは伝わるが、建物の倒壊を防ぐ。コストは比較的低い。
制震:建物の揺れを吸収する。既存の建物への後付けは難しい場合がある。耐震よりはコストがかかる。
免震:建物に地震の揺れが直接伝わるのを防ぐ。3つの中でコストが最も高い。

 

今回は、一般的な住宅に行われる「耐震」補強工事で使われる方法を見ていきましょう。以下で紹介する耐震工法を、耐震診断の結果・建物の状態・予算などに応じて組み合わせます。
 

1、壁を補強する

壁を補強することで、崩壊や倒壊のリスクを低下させることが可能です。多くの場合、既存の壁を一部解体する必要がありますが、天井や床を壊さずに補強工事ができるケースもあります。
 

壁を補強する方法
  • 耐震壁を増設:強度の高い壁を増設し、高い耐震性能を得る。木造・鉄骨造など幅広く使える。
  • 構造用合板を設置:合板で壁全体を覆うことで、地震の横揺れを広い面積で受け止める。
  • 筋交いの追加:壁に斜めの補強材(筋交い)を追加する。比較的コストがかからず、施工が簡単。

2、柱を補強する

これは本文ブロックです

柱を補強することで、建物全体の強度を向上させ地震の揺れに備えます。
柱は建物の骨格を形成する重要な構造要素です。柱全体が老朽化している場合は、基礎を含めて大規模な補修が必要となることもあります。
 

柱を補強する方法
  • 筋かい補強:柱と柱の間に斜めの木材(筋かい)を入れて補強する。
  • 銅板巻き・炭素繊維シート補強:補強鉄板や炭素繊維で柱を巻く。比較的施工が簡単。
  • 柱の根継ぎ補強:傷んだ柱を切断し、新しい木材をつぎ足す。
  • 接続金属で補強:柱と土台、梁との接合部に金物を取り付けて補強する。

3、屋根を軽くする

重い瓦屋根を軽量な材質に変更することで建物の重心が下がり、地震時の揺れが軽減されるため、建物が倒壊するのを防ぎます。

屋根の軽量化は、壁を補強するよりコストがかかることが多いため、雨漏りや屋根の痛みが気になる場合に検討すると良いでしょう。
 

屋根を軽くする方法
  • 瓦を別の屋根材に交換する:トタン・ガルバリウム鋼板・コロニアルなどの屋根材に変更する。
  • 防災瓦に交換する:特殊なロック構造により、ズレや落下などの危険性が大幅に軽減される。
  • 瓦をふき直す:全ての瓦を釘打ちし、棟瓦をビス固定するなどして耐震性を高める。

4、基礎を補修・補強する

建物の基礎を補強し、建物全体の安全性を高めます。耐震診断で基礎が損傷している、基礎が弱いと診断された場合によく用いられる方法です。

今ある基礎を活用するので、壁の補強よりは費用を抑えられる可能性があります。
 

基礎を補修・補強する方法
  • ひび割れ補修:基礎のひび割れを補強する。建物への影響が少ない。
  • 増し打ち基礎補強:基礎に新たなコンクリートをたす。建物を住みながらの施工が可能。

5、制震・免震装置を設置する

建物と地盤や柱と柱の間に、ダンパーなどの制震・免震装置を設置し揺れを吸収します。高い耐震性能が得られますが、コストが高いのが特徴です。今住んでいる住宅に後付けできる製品もあります。
 

耐震補強のプロセス

耐震補強のプロセスは以下の通りです。耐震補強を行うには、耐震診断を受ける必要があります。
 

1、耐震診断をする
2、補強を設計する
3、工事の実施
4、完了検査
 

耐震診断を受けるには、住宅の調査が必要です。建物の状況を知るために設計図書・地盤調査資料・改修工事の記録使用履歴などが必要になります。ご自宅に書類や図面がのこっているか確認しましょう。

1、耐震診断をする

耐震診断を行う際には、主に以下のような調査が行われます。
 

資料調査:既存の設計図書・地盤調査資料・改修工事の記録などを確認し、活断層や地震歴など、公開されている関連資料も集める。必要な図面(平面図、断面図、軸組図、小屋伏図など)がない場合は実測して資料を作成する。
目視調査:図面が正確かどうかを確認し、記載されていない部分の状況を調べる。どこが破損・劣化しているか、状況を確認する。
地盤調査:建物が建っている地盤の状況・液状化の可能性・地震動の増幅度合いを調査する。
物性調査:柱や基礎の強度や固さを確認し、必要に応じて試験を実施する。

 

目視調査は1〜2時間程度。図面がないとさらに1時間ほどかかるでしょう。屋根裏なども確認するので、通路は片づけておくと良いです。

調査したデータや建物の耐震性能を評価し、今の耐震基準と比較して判定を行います。

 

各自治体の助成制度を活用すれば、耐震診断にかかる費用負担を大幅に軽減できるのでチェックしましょう。

富山県を例にあげると、住宅の大きさや図面の有無によって差がありますが、自己負担はわずか2,000円〜6,000円程度で診断を受けられます。
 

2、補強を設計する

耐震診断の結果から補強の必要があると判断されると、どこを補強するか設計を行います。

耐震診断をもとに、耐震壁を増設し壁を補強したり、基礎のひび割れを補修したりと、ご自宅の状況によってさまざまです。ご予算によって複数の提案をすることも。

 

使いづらくなったトイレや台所などのリフォームと一緒に耐震補強を行う方もいます。
 

3、工事の実施

設計に基づいて耐震補強工事を実施します。基礎の補修や屋根を軽くする工事は、外部からの工事がほとんどです。住みながら耐震補強工事が受けられます。

4、完了検査

工事が完了したら、再度耐震診断を行います。耐震補強工事によって、目標とする耐震性能が達成されているかを確認します。
 

耐震補強で利用できる補助金

ご自宅の耐震補強をしたいと考えているなら、助成金や補助金をうまく活用しましょう。1981年(昭和56年)5月31日より前に建てられた建物を対象に、耐震補強工事にかかった費用の一部を補助する制度があります。

1、国の助成制度

国が耐震補強を積極的に活用してもらうために行っているのが「耐震対策緊急促進事業」です。

公共の建物を対象としていますが、耐震補強費用の一部を国が直接補助、または地方公共団体とあわせて補助します。
参照:国土交通省ホームページ
 

2、地方自治体の補助金

多くの自治体で、耐震補強の助成制度を設けていますが、お住まいの地域によって受けられる支援の内容が変わります。補助率は50〜100%程度で、上限額が設定されていることが多いです。

富山県の耐震診断・耐震改修に対する支援制度をご紹介します。

 

耐震診断:診断費用の9割(自己負担2,000円~6,000円程度)
耐震改修:工事費の5分の4を補助(100万円まで)

補助金が利用できる住宅の条件
築年数:1981(昭和56)年5月31日より前に着工して建てられた
建物の構造:木造2階建て・平屋建て
使われている工法:軸組工法

参照:富山県庁ホームページ

 

お住まいの耐震補強の補助金が知りたい方はこちらからご確認ください。

3、助成金申請の流れと注意点

耐震補強の助成金を受けるには、お住いの各市町村窓口に相談しましょう。多くの場合自治体で年度内の申請期限があるので注意が必要です。

一般的な耐震補強の助成金を申請する流れを紹介します。

 

1、耐震診断を受ける。
2、補強計画を作成してもらう。
3、補助金交付を申請する(申請書・耐震診断結果・補強計画・見積書などを自治体に提出)。
4、審査が終わると、自治体から交付決定通知が発行される。
5、交付決定通知が発行されたあとに契約・工事を実施。
6、工事完了後、期限内に完了報告書と必要書類を提出する。
7、自治体の確認後、補助金を請求し交付される。

 

助成金の交付決定通知を受ける前に耐震補強工事を開始してしまうと、補助金が受けられなくなるので注意が必要です。

また、耐震工事の内容を変更する場合は、直ちに自治体に連絡し、必要な申請手続きを行います。

耐震補強でよくある質問と答え

ここからは、耐震補強に関するよくある質問と答えをまとめました。

どんな業者がいいの?

耐震診断や補強工事の経験が豊富な業者に依頼しましょう。耐震補強は阪神淡路大震災以降に始まった比較的新しい分野です。そのため、ベテランの大工や一級建築士でも、耐震診断や補強工事の実践経験が乏しいことがあります。

 

この分野では、資格よりも耐震補強の経験が重要です。耐震診断と補強工事の両方に豊富な経験を持つ専門家を選ぶと良いでしょう。
 

耐震補強と一緒にリフォームもできる?

はい、むしろ耐震補強とリフォームを同時に行うことをおすすめします。

耐震補強とリフォームを同時に行うことで、時間とコストを節約しながら、安全性と快適性を一度にアップグレードできます。

 

ぜひ、耐震補強工事とリノベーション経験の豊富なユニテにご相談ください!
 

住みながら耐震補強できる?

多くの耐震補強の場合、居住しながらの工事が可能です。

 

ただし、工事の規模や内容によっては一時的な転居が必要な場合も。住みながらの耐震補強を希望する場合は、早めに施工業者へ相談しましょう。

希望に沿った耐震補強工事を計画してくれますよ。

耐震補強をして家族や財産を守ろう

耐震補強は、建物を強化するだけではなく、あなたと家族の命と財産を守ります。

 

耐震補強をした方がいい家
  • 1981年6月より前に建てられた家
  • 過去に地震を経験した家
  • 木造で壁が少ない家
  • 窓が多い家
  • 大きな吹抜けがある家
  • コンクリートの基礎がない家
  • 重い瓦屋根の家
  • 軟弱な地盤や埋め立て地に建つ家
  • 地震ハザードマップで危険度が高い地域の家

 

耐震補強工事は、さまざま方法を組み合わせて工事を行い、耐震診断の結果や建物の状態によって費用は変動します。

各自治体に耐震診断費用と耐震改修に対する支援制度を活用しましょう。一般的な耐震補強の助成金を申請する流れは以下の通りです。
 

1、耐震診断を受ける。
2、補強計画を作成してもらう。
3、補助金交付を申請する。(申請書・耐震診断結果・補強計画・見積書などを自治体に提出)
4、審査が終わると、自治体から交付決定通知が発行される。
5、交付決定通知が発行されたあとに契約・工事を実施。
6、工事完了後、期限内に完了報告書と必要書類を提出する。
7、自治体の確認後、補助金を請求し交付される。

 

耐震補強の助成金・補助金をうまく活用して、安心な暮らしへの第一歩を踏み出しましょう。

 

ユニテは築100年の古民家をリノベーションした実績や、耐震補強工事に多く携わっております。あなたのご自宅を、より安全で、より住みやすく生まれ変わらせましょう。